法案の誤記について思う

コロナウィルス対策で官僚の皆様の業務が増えたことが一因とされていますが、今国会で審議される法案にたいへん誤記が多いことが問題になっています。

最終的には法令の「条文」が残ることになりますが、審議にあたっては「五点セット」というものを官僚の皆様が用意することになっています。

「五点セット」とは、①案分、②理由、③要綱、④新旧対照表、⑤参照条文です。重要は「①案分」は、さすがに、どの省庁でも、読み合わせを重ね、誤記を見つける。最近では、それを行う「チェックソフト」などもあるようです。誤記が頻発しているのは、それ以下の文書のようです。

誤記の原因に「コミュニケーション不足」があると報道されています。一人の担当者が文書を作成する、それを「チェックしてください」とメールで送信する。ところが、担当者が優秀な人材だと判断しているのか、文章を斜め読みして、次に回す、というようなことになっているのではないかと思います。

以前であれば、書類を持参し、一つ一つ説明して、印鑑を頂戴するというお作法だったのではないかと思います。こんなところに、印鑑廃止の弊害と言いたくはありませんが、誰がいつ、何をチェックしたのか、というエビデンスが残っていないのか、むしろ、「印鑑時代」はそのような途中のプロセスを記録に残す仕組みがなかったはずで、むしろ、印鑑廃止とともに、パソコン上で、チェックした人がしっかり、自分の責任でこれは「間違いなし!」と「承認」するプロセスが重要だと思います。

まさか、人材不足で、一つ一つの文書を一人の優秀な官僚が作成し、誰もチェックしないで国会に上程するということにはなっていないと信じています。

誤記をふせぐ方法論として「読み合わせ」という手法があります。担当者とチェック者が対面で座り、担当者に読ませるのではなく、チェック者が文章を一語一句、声に出して読んでいきます。そのとき、双方で誤記を発見する仕組みです。

会話せずに、ポンポンとメールを送って済ます、ということでは、誤記は発見できないのです。仕事が早く片付くようで、ミスが伝播するだけで、たいへん労力のかかる「やり直し」が必須になってしまいます。

コロナ対策で、対面して座るというのも問題で、アクリル板を介して会話しているのかもしれませんが、こういうところは、基本に帰って、手順を踏んで忠実に行う必要があるものと思われます。

(昔は、重要な文章は手で買いていたものです。いらすとやさんからいただきました)