民法改正による建設業の現場実務への影響(その1)
私は、建設業で現場代理人ができる、電気施工管理技士という資格を持っています。世の中の変化に対応すべく、5年毎に更新のための講習を受けることが必須条件となっており、昨年、10年目の更新講習を受けたところです。
その際、以前はなかったサービスですが、メールアドレスを登録することによって、重要な法改正などがあった場合にニュースでお知らせが届くようになりました。
今回は、民法改正に伴ういくつかの契約上のことについての連絡がありました。正確には「建設工事標準請負契約約款」に関するものです。かいつまんで、その内容をみていきたいと思います。民法改正の契約編のおさらいになります。
項目でいうと、次の4点です。
①譲渡制限特約について
②契約不適合責任について
③契約の解除について
④契約不適合責任の担保期間について
本日は、債権の「譲渡制限特約」について書くことにいたします。
1.譲渡制限特約について
◆譲渡制限特約が付されていても、債権の譲渡の効力は妨げられないとされた
⇒そうなんです。「譲渡制限」という特約があるのに、どうしても債権を譲渡せざるを得なくなるような場合、債権を譲渡したことによる効力は有効だということになりました。そのようなケースについて以下の補足があります。
◆譲渡制限特約は維持した上で、
・公共約款については、前払、部分払等によってもなお工事の施工に必要な資金が不足する場合には発注者は譲渡の承諾をしなければならないこととする条文
・民間約款については、資金調達目的の場合には譲渡を認めることとする条文を選択して使用できることとした。
⇒債権を譲渡さぜるを得ないほど手もとの資金が行き詰っている状況が想定されます。公共工事と民間の場合とで、制約条件が少し違います。公共工事の場合は、発注者から工事完成前ですが「前払、部分払等」の代金の支給がある場合があります。それでも、工事を施工する上で資金が不足するような場合には発注者は債権譲渡の承認をしなければならないと定められました。一方、民間同士の契約の場合には、縛りがゆるく、ともかく、資金調達の目的で債権譲渡をする必要があれば譲渡を認めるという内容の条文を「債権譲渡特約」付きの契約の場合でも付記することができるということになりました。
◆併せて、譲渡制限特約に違反した場合や資金調達目的で譲渡したときにその資金を当該工事の施工以外に使用した場合に、契約を解除できることとした。
⇒ここまで行ってしまったら許されないという文言です。約束違反の点です。債権を譲渡して得た資金をこの契約上の工事ではない、ほかの目的に流用したような場合には、発注者は契約を解除できるとされました。
法改正のときには、そこまで考えられていたのかどうか、ともかく、新型コロナの影響で、いろいろな事態が起こりえますので、ここはよく理解しておくべき点とおもわれます。
(写真は「写真AC」の FineGraphicsさんからいただきました)