「押印廃止」の次に来るもの

昨日のニュースに「確定申告、押印廃止を検討 加藤官房長官」というものがありました。すでに、河野行政改革大臣からすべての官庁の書類から印鑑を無くすべきだというコメントが出されたのが1か月前のことなので、ニュース性は低いと思われます。

国税関係の法律法には「各種の税務書類に押印を求める規定がある」ので簡単には押印廃止にできない、したがって、「具体的には来年度税制改正のプロセスで検討が進められる」と記事は伝えています。

つまり、見出しは、ずばり、確定申告から押印を廃止するかのようですが、直近の来年3月の申告からではなく、まず、来年度の税制改正で議論することがあり、当然に法律を一部改正するので、それと一緒に押印廃止もしっかり法律でうたってからにしますよ、という表明と読めました。

そうすると、実際に押印廃止が行われるのは、次の2021年春の確定申告ではなく、来年は議論して税制改革が国会で決まってから、(決まらなければさらに伸びそうですが)、早くても、2022年の確定申告から、ということになります。

これは、記事を起こす人のセンスの問題かもしれませんが、いまさら、「申告書から押印を廃止する方針」ということ自体、検討の方向性として当たり前の流れになっていますので、せめて、「いつから」なのか、さらには、「押印をなくした後の書類はどういうイメージになるのか」ということに踏み込んでもらいたいものだと感じました。

ひとつ懸念することがあります。

「押印廃止」は、もはや、国民の皆が認めている方向性と考えてよろしいかと思います。官庁に提出する書類の何割が早期に実現するかは別として。

今までは、仮に申請者が本人でなく代理の人であっても、あるいは、書類を代筆した場合であっても、100円ショップで購入可能な「三文判」を押しさえすれば、立派な「本人作成書類」として認められたという、市民にとっては、とても便利な仕組みがありました。

それを大上段から、法改正して、「押印廃止」を改正法に盛り込む議論をするとなると、「印鑑に変わる本人確認手続きはどう担保するのか」といった、本来、必要だった手順を蒸し返すことになりはしないか、という点が心配されます。

一言でいえば、「三文判で済んでいた時代のほうが簡単だったなあ」というようなことになりはしないかと。

「とりあえず、今ある申請書類の押印欄は印鑑を押しても押さなくてもいいのです」というソフトな変革にならないものかと気になりました。

(今回もイラストをジブリからいただきました。本文とは関係ありません。「かぐや姫の物語」から)