行政手続きのデジタル化の進展で気を配ること

デジタル庁の発足が政治日程にあがっています。今度こそ、様々な行政手続きが簡素になる方向に改革が進むことを期待しています。

いろいろな申請書類にハンコを押すことは当たり前のようになっています。例えば、役所に行って、住民票を取り寄せる場合の申請の用紙に、申請者の名前を書いて、その横に押印します。その印鑑は、百円ショップで売られている「三文判」でもよろしいわけで、考えてみたら、本人を証明するものでもなんでもなく、ただの模様、ただの儀式に過ぎないことがわかります。

頭の悪いお役人さんは、印鑑を無くすることに代えて、デジタルの時代なので、「電子承認システムの導入」を考えたりします。これは、よしていただきたい。「単純に無くする」こと、「削減する」方向で検討していただきたいところですが、「印鑑を押す意味は本来、本人確認の手段だった」ので、デジタルツールでその役割をするのが「電子申請だ」という思考で対応されると、これまでは「三文判を百円ショップに買いに行く」という手間で済んだものが、パソコンやスマホに電子認証アプリを入れて、いくつかのパスワードを設定して・・・、ということになると、デジタル地獄になってしまいます。そういうことを望んでいるのではないことをはっきり言っておきたいと思います。

建設業の申請に関しても、例えば、納税証明書や社長さんの住民票など、30種類もの書類を添付する必要があります。納税証明書は税務署が持っている情報ですし、住民票は市役所にある情報です。それらをいちいち、あちこち、取り寄せなければならないのは、各行政機関の間に連携するパイプがないので、申請者がいちいち取りそろえることになります。

ここでも、「納税証明書」をデジタルなツールでパソコンに取り込んでデータとして添付するなどということになるのを期待しているのではありません。官庁間で法人番号を連絡すれば、申請者を介さずとも照合ができるはずであり、申請書類から無くしましょうということを期待しています。

さて、そのような、行政手続きが簡素になり便利になっていくに伴い、それを仕事にしてきた行政書士の将来はどうなるのか。

究極の解答を持ち合わせていませんが、この度、10月1日付で酒税法が改正になり、「第3のビール」の税金が、一缶につき10円程度値上がりします。第3のビールを扱っている各社とも9月中にうりさばき、来月から値上げという路線をとるのが当たり前ですが、自社でも「第3のビール」のプライベートブランドを持っているイオンは、78円のまま、値上げしないという方針だという記事を読みました。その記事から。

「上げにもうけるな、下げにもうけよ」という家訓が貫かれる。第1次世界大戦が終わった1920年、生糸相場が暴落した際に仕入れ値を下回る安売りで消費者の支持を集めて苦境を乗り切った。」

「当時はスペイン風邪の流行期で人々の不安感も根強かった。新型コロナウイルスはいまだ収束の兆しが見えず、景気や雇用の先行き不安は強い。「節約意識の高まりはこれからが本番」(首都圏の大手スーパー幹部)との声もある。」

「下がる時に役立つのが本当の商人――。イオンの岡田卓也名誉会長は著書でこう記す。イオンのDNAがコロナ下で支持を得られるか注目されそうだ。」

行政手続きが簡素になるタイミングこそ、行政書士の真価が問われそうです。

(ジブリに著作権がありながら、ご使用はご自由にというあたたかい配慮で今回も映画の1枚を使わせていただきます。本文とは関係ありません)