経済対策とは

新型コロナの感染拡大防止なのか、経済優先なのかという議論のなかで、「GO TO トラベル」のなかに「東京」も加えるべきだということになってきています。新規感染者は下がってきているとはいえ、ゼロにはならない趨勢ですし、ワクチンや治療薬が大規模に使われるのも来年以降になりそうな状況下ではやむを得ない選択肢なのか。

外国人観光客はここ数年、たいへんな勢いで増加し、地方の観光名所は日本人よりも外国人に焦点をあててきました。それによって地方経済も活性化することが期待されてきたと思います。それが新型コロナの影響で激減し、ほとんど外国人旅行者はゼロという状況になれば、その穴を埋めるために、日本人の皆さんにもっと地方に旅行に行ってください、という施策もわからないわけではありません。

しかし、冷静に考えると、そのための給付金や補助金は、元々、国民が納めた税金です。したがって、自分が支払ったお金を自分で取りに行くという構図ですので、外国から旅行者が地方の観光地に様々な形でお金を落としていくということと本質的に違うような気がしてなりません。

9月26日の日経新聞に「造船・鉄鋼、『脱国内』シフト 生産能力3割過剰も。三井E&S、建造から撤退 日本製鉄は海外拡大に活路」という記事がありました。「造船や鉄鋼業界が国内生産設備の能力削減に動き出した。三井E&Sホールディングス(HD)は国内の船舶建造からの撤退を決め、日本製鉄は生産拡大の場を海外に移す。中国や韓国の企業の攻勢に新型コロナウイルスに伴う需要減が重なり、国内の生産能力は今後、約3割が過剰になる可能性がある。雇用も見直しが必要になる。」と。

当事者の皆さんは散々、対策を練った結論として、この「造船や鉄鋼」は、もはや国際競争力がないので、日本で製造し続けていても将来性がないと判断したものと思いますが、この記事の文中に「新型コロナ」という字がなければ、見落とすところでした。これも「新型コロナ影響」なのだとすれば、このような、観光以外の領域の大規模な経済対策という話がどこからも出てこないのは、もはや、トヨタや日産、ホンダのような世界で首位を目指せるような産業分野でなければ、国の税金を補填する価値がないものなのかと思ってしまいました。

同じ日の日経新聞に「米、半導体に補助金2.6兆円 生産海外依存に危機感」という見出しで、「米連邦議会が半導体の国内生産を促すため、新たに250億ドル(約2兆6000億円)規模の補助金を投じる検討に入った。巨額の公的支援で中国に対抗し、インテルなど米大手の開発力を底上げする。半導体生産の海外依存を放置すれば、産業競争力の低下に加え、安全保障や軍事力にも響きかねないとの警戒が背景にある。」というのがあったのが対照的で目にとまりました。

地方の活性化は、「観光」しかないのか、気になったものです。

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