行政手続きの締め切りに裕度を認めることについて
新型コロナウィルスの影響拡大を防止する観点で、不要不急の外出を控えることなどが政府や地方自治体からアナウンスされています。
そのため、いろいろな手続きが期限までに間に合わないことが想定されるため、各種の報道がなされておりご存知の内容かと思いますが、期限の延長が示されています。
1.国税庁から「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の延長について」として、4月16日まで延長するとのお知らせがありました。
2.警察庁は新型コロナウイルスに感染したり、感染の疑いで運転免許証を更新できず失効した人のために、自己申告だけで通常の更新と同じ手続きで免許を再取得できる運用を全国で始めました。特別、医師の診断書のような書類は不要とのことです。
3.出入国在留管理庁は、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、3月中に在留期限を迎える外国人を対象に、在留期間を更新したり在留資格を変更したりするための申請手続きを1カ月間猶予すると発表しています。本来は在留期限までに申請する必要があるものですが、申請を分散させることで感染リスクを下げたい考えです。本邦で出生した方など3月中に在留資格の取得申請をしなければならない方を含みます。
など、様々な配慮がなされています。
このような非常時に行政手続きが緩和されるものとして「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」というものがあります。「特定非常災害特別措置法」と呼ばれるものです。この法律自体は、東日本大震災ではなく、平成7年の「阪神・淡路大震災」のときにできたものです。
「具体的にどの権利利益等について延長措置を講じるかについては、各省庁が告示により指定する」とされていますが、以下のことが条文で定められています。
第3条(行政上の権利利益に係る満了日の延長に関する措置)
第4条(期限内に履行されなかった義務に係る免責に関する措置)
第5条(債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置)
第6条(相続の承認又は放棄をすべき期間の特例に関する措置)
第7条(民事調停法による調停の申立ての手数料の特例に関する措置)
第8条(建築基準法による応急仮設住宅の存続期間の特例に関する措置)
第9条(景観法による応急仮設住宅の存続期間の特例に関する措置)
後半は、震災などの災害特有のものですが、前半は、今回のような事例にも準用できるものかと思われます。
通常は、きちんと期限にこだわるお役所のイメージですが、いろいろ経験を積んできています。今回の新型コロナウィルスの影響が、名称の点で「特定非常災害」に該当するのかどうかまではわかりませんが、各省庁がそれぞれ、このような経験を踏まえて、対策をとっているものと思われます。
将来「行政手続きのデジタル化」が進んでも、このような臨機応変な対応を望みたいものです。
(写真は、RRiceさんによる「写真AC」からいただきました)