変わりつつある建設業
国土交通省から、発表された、建設業の令和2年度の公共工事の入札に用いる建設業の労務単価に付帯して、この業界の休暇取得の実態が記載されています。
多くの業界では週休2日制が浸透している昨今ですが、建設業はどうかと言えば、ある月の休暇取得の状況に関して、グラフに示されるように「8日以上」すなわち、週休2日以上の休暇取得者が55%、8日未満が45%となっています。建設技能労働者の休日の状況は平均で8.4日とのことで、引き続き、国土交通省は「週休2日工事の拡充・強化、適切な工期設定等を通じて、建設業における働き方改革を推進する」としています。
ただし、休暇取得を増やすことが単純ではないことが右の図に示されています。この図は、有給休暇の取得義務の対象となる労働者の中で、義務化分の有給休暇を取得している技能労働者を「元請」、「1次下請」、「2次下請」、「3次下請以下」、そして「全体」に区分して、取得の割合を示したものです。「元請」は53.9%の取得率なのに対して、下に向かうほど顕著に減少していき、「3次下請以下」では28%となっています。しかも、この図は、「10日以上の有給休暇が付与された労働者」を対象にした集計であり、零細企業のなかには、「企業が有給休暇制度を設けていない」というところもまだあるようです。
少し前は、このような実態調査の結果が出ても、建設業とはそういうもので当たり前のこととして見過ごしてきたことと思います。しかし、建設業も人手不足のなかで、外国人技能者に頼る前に、日本人の若者にとって魅力ある業界にしていくために、このような休日や休暇が少ない、あるいは、特に下請けほど休暇が取りにくいという体質を変えていこうとしています。きっかけになるのは、公共工事を受注する「元請」の工程管理が重要になってきます。全体のコストを低く見積もる観点から無理に短縮した工程で受注したとすると、結果として低コストで下請けに発注し、また、完成までのスケジュールも土日に働かなければならないようなタイトなものになっていきます。
そのような部分にまでメスを入れて、入札時には、労務費の内訳を示し、また、建設工程の根拠を詳細に展開することを求めることによって、適正な公共工事の発注になるように指導していく姿勢がみてとれます。
発注する官庁の側から、そして元請社から「働き方改革」を推進していくことで、建設業も大きく変わっていくものと思われます。この方向での改革に期待したいと思います。
(図は、国土交通省の2月14日付けの広報資料から抜粋しました)