公共工事の見積用の労務単価が1日2万円を超えました

先週末のことですが、2月14日に、国土交通省から「令和2年3月から適用する公共工事設計労務単価について」というお知らせがありました。公共工事のそれぞれの案件に入札する際に用いる労務費の単価のことですが、単純に一つの数字ではなく、47都道府県別に、51職種別にわかれて単価が設定されています。この国土交通省の記事は、それを踏まえて、全国・全職種の平均値を集計し、トレンドを確認しているものです。
今回、その全国・全職種の平均の1日あたりの労務単価が、20,214円と、はじめて2万円を超えました。
ここでいう「単価」は、単純な「日当」ではなく、賞与や食事提供の場合はその費用も含まれています。また、全職種に対して、社会保険への加入の徹底を指導している観点から、その費用と、労働基準法の改正による有給休暇の取得義務化も反映されたものになっています。
資料には、平成9年からの同様の全国全職種の平均労務単価のグラフが示されています。単純に年々、上がってきているものと思いましたが、そうはなっておりません。平成9年から平成23年までは、建設工事の減少によって労働者の供給がだぶつき、結果として、年々単価がさがっています。
昨今、人手不足で外国人の実習生や外国人技能労働者を投入しなければならないことが叫ばれていることと正反対の状況が15年間も続いて起きていました。
それが上昇に転じたのは、皮肉なことに、平成23年の東日本大震災が関係しています。あちこちで災害復旧のための工事が立て込んだ結果、公共工事の入札が不調に終わるという現象が続き、結果として、労務単価も一転、上昇に向かいました。「法定福利費」を集計に加える変更を行った統計上のギャップがありますが、それにしても、多数の公共工事が目白押しなのに人材不足という最近の状況を反映したものになっているものと思われます。
加えて、冒頭にも触れましたが、「社会保険への加入の徹底」、「有給休暇の取得義務化」ということで、もはや、建設業も「日雇い労務者」の世界ではなくなっていることを認識する必要があります。
「大手ゼネコンはそのような見積を出すのだろうが、末端の下請けは依然として労働環境が改善されていない」というようなことは元請社に様々な制約をかけることによって根絶の方向に向かっていると思いたいものです。
このような統計データは直接的には行政書士の業務と距離がある、社会保険労務士や中小企業診断士の領域と思われますが、世相を分析する上で、さらに、各職種別の労務単価などの細部についても調査分析していきたいと思います。
(このグラフは、国土交通省の2月14日付けの広報資料から抜粋しました)