クルーズ船の外国人乗客に係る入国審査手続

新型コロナウィルスの関係で、横浜に停泊している、ダイヤモンド・プリンセス号から米国人乗客380人を下船させ、チャーター機でカリフォルニア州の空軍基地に向かうことが決まりました。米国政府としては米国人の保護と、日本政府への負担の軽減ということでとった措置だと報道されています。政府間で双方の国民にとって最善の方法を話し合い、迅速に決定するということは重要なことだと認識しました。

一連の、感染症に対する対処として、根拠となる法令は、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の第5条「上陸の拒否」の中で「次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。」として、1項に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定める一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者」と定められています。

一方、中華人民共和国湖北省の滞在歴のある者の入国拒否に関しては、上記の条文ではなく、同じ入管法第5条の14項に
「14 前各号に掲げる者を除くほか,法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」という規定があります。ただし、この条文は一歩間違うといかようにも対処できるものであり、政府としては慎重に閣議を経て判断しているという手続きになっています。

同様に、沖縄県への寄港が予定されていたクルーズ船「ウエステルダム号」の入港拒否の判断を行ったのは、この条文に依るものと発表されています。

ところで、このような、ネガティブな内容ばかりではなく、逆に、数年前から、「クルーズ船の外国人乗客に係る入国審査手続の円滑化」に関する議論も行われています。
内閣府の「貿易・投資等ワーキング・グループ」の会議関係の資料に、それに相当するものが公開されています。
「クルーズ船の外国人乗客に係る入国審査手続の円滑化」として平成26年に検討されています。背景には「クルーズ船は,一度に多数の乗客が乗降する一方,滞在時間が短いため,入国審査待ち時間を極力短くすることが求められている」という「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」の一環です。「新たな特例上陸許可(船舶観光上陸許可)の新設」というものです。
この関連は「入管法」の第14条の2項に「船舶観光上陸の許可」として定められています。指定旅客船の外国人乗客が例えば、横浜港から上陸し、新幹線などの陸路をへて、帰りは神戸港から同じ船で出国するようなケースが認められています。

このような、規制緩和で進められてきた入国審査の簡素化の流れが逆行しないように、早期に、新型コロナウィルスの影響が収束することを願っています。

(図は、平成26年の内閣府の審議会資料からいただきました)