入管と不服審査の関係(その2)
入管と不服審査について論じるときに、少し、複雑な点がありますので、そもそも、行政不服審査法の趣旨、同時に、入管法のエッセンスについての両面から解明していきます。 この観点で、とても分かりやすく解説している論文がありました。 「日本における入管法上の不服申立制度の現状と課題」坂東雄介(商学討究 第68巻 第2・3号)この論文を参考にさせていただきます。
まず、行政上の不服申立制度の存在理由及びメリットは、どういう点だったのか。行政書士の試験勉強のなかでも学習した内容です。それは、 ①簡易迅 速な救済が実現できること ②処分の違法性のみならず, 処分の当・不当の問題まで審査できること ③行政の側から見ると,自己の処 分を見直す機会が与えられること ④不服申立の段階で紛争を解 決することによって裁判所の負担軽減に資すること となっています。
ただし、行政不服審査法は、第7条で適用除外について記載されています。第1項10号 「外国人の出入国又は帰化に関する処分」 つまり、入管関係には、行政不服審査法は適用されないとされています。 ただし、すべてが適用されないわけではありません。
そもそも、「入管法」が対象としている手続きには、①上陸手続,②在留資格変更・在留資格取消し手続,③退去強制手続,④ 難民申請手続があります。 このうち、④ 難民申請手続には、行政不服審査法が適用されます。
ここで重要な点は、入管法に関して、行政不服審査法の適用が遅れているということではなく、全くその逆だという点を押さえておく必要があります。 行政不服審査法はいくつかの改正が行われ、今の形になったのは平成26年になってからです。一方、入管法は昭和26年に制定されていますが、その時点で、現在の行政不服審査法のような手続きに不服がある場合そのお申し出を聞き入れるという内容が織り込まれています。外国人の入国に関するものですので、法成立の過程で当時日本に進駐していたアメリカの影響が反映されたものになったということかと思います。ほかの行政手続きには、まだそのような不服をとりあげるという内容がなかったのにかかわらず。 ですので、行政不服審査法が第7条で、「外国人の出入国又は帰化に関する処分」を適用除外としているのは、出入国管理は管理当局の裁量の余地が大きいということを意味しているのではなく、すでに入管法のなかに相応の仕組みがあったから、という趣旨だと理解できます。 さらに、入管の各手続きのなかで、どういう段階で不服の申し出を取り上げる仕組みになっているのか、次にみていきたいと思います。