政府に先行して電子化に取り組む業界
あらゆる行政手続きが「電子化」の方向へ向かっています。
放っておいたら、いくつかの行政関係の「士業」の役割がやがてなくなってしまうのではないかと心配になるほどです。
そんなことを考えていた矢先、驚いたのはこの記事です。
「SAPなど会計ソフト5社、デジタル化促進で提言」(日経新聞、6月25日)
「研究会に参加したのは、SAPジャパンのほか、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生(東京・千代田)。各社の社長や会長などの代表者のほか、日本税理士会連合会や東京税理士会、内閣官房からオブザーバーを集め、提言を作成した。」という内容です。
この税理士業界の方は、たいへん賢いと思います。放置しておくと、確定申告はじめ、様々な申請手続きが「電子化」に向かいます。税理士さんの仕事もどんどん不要なものに置き換わっていく趨勢です。それならば、「こういう仕組みに置き換えたらどうか」と政府にアイデアを出していこうという試みのようです。
そごいと感じたのは、この「研究会」の成果物は、単に、申請の書式を提示するというような形式的なことではないという点です。提言の方向性として、次のように態度表明しています。
◆情報通信技術が急速に発展している一方で、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものの一部の電子化(Digitization)に留まっている。改めて、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである。
◆社会的システムのデジタル化による再構築に際して、 発生源でのデジタル化、2. 原始データのリアルタイムでの収集、3. 一貫したデジタルデータとしての取り扱い、4. 必要に応じた処理の主体の見直し、の4つのポイントを踏まえるべきである。
「行政手続きのデジタル化」を既存の提出用紙をデジタルなものに置き換えるのではなく、紙文化を根本的に見直そうという試みです。
ここに関わっている5社は、会計ソフトを扱っている会社です。日本全国の税理士さんは、それぞれの差異はあれ、共通のソフトを日頃から道具として使っています。だからできる、共通の提言ということなのかと思います。
さて、行政書士の業務はどうでしょう。建設業の許認可、相続・遺言、入管手続き、車庫証明はじめ交通関係、ペット法務など幅が広すぎるからなのか、税理士さんの業界のように、共通して扱うツールといえるものは、建設業の「経営事項審査」あたりかと思われます。
「座して死を待つ」のではなく先手を打てるかどうかが、その業界の将来を決めていくように思われます。
(写真は、 cheetahさんによる「写真AC」からいただきました)