これもデジタル化

いろいろな観点で民法改正が進められています。

特に債権法は、「明治29年(1896年)に民法が制定された後、債権関係の規定(契約等)について約120年間ほとんど改正がされなかった」ということで大きな変更になっています。

一方、「相続法」に関しては、昭和55年に大きな改正がありました。明治以来の「家」を中心とした相続の概念を変えてきた流れがあり、この改正では、配偶者の法定相続分が引き上げられたことや、代襲相続制度の見直しが行われ、兄弟姉妹の子は「被相続人から見て甥・姪まで」に制限されたことなど、現行のルールになっています。

その後も、平成25年には、嫡出でない子の相続分も嫡出子の相続分と同様、2分の1とする改正が行われています。債権法に比べると、その時々の社会のルールを反映したものに変わってきています。

その相続法の改正は、いくつかの項目から構成されている関係で、施行の日が異なっていました。このようになっています。

◆民法等の一部改正法
①自筆証書遺言の方式を緩和する方策;平成31年1月13日
②預貯金の払戻し制度,遺留分制度の見直し,特別の寄与等;令和 元 年7月 1日
③配偶者居住権(配偶者短期居住権を含む。)の創設等;令和 2 年4月 1日
◆遺言書保管法;令和 2 年7月10日

この最後の「遺言書保管法」が施行されるのが、もうすぐの、7月10日からです。区切りの良い、「7月1日から」とならなかったのは、いろいろな準備があったことや、7月1日は人事異動の日に当たるなどの事情があったのでしょうか。

その「遺言書保管法」について、法務省のパンフレットにわかりやすいイラストがついています。自筆証書遺言を法務省に預けるとスキャナで電子化してくれて、画像データ化することによって、遺言者はいつでも、タブレット端末などで見ることができるという制度がスタートします。

遺言者が亡くなって相続が開始されると、この自筆証書遺言があることが通知されることになっています。

ここで、二つ、思うことがあります。

まず、この制度は相続をめぐって親族間でもめ事が起きることを防止する観点で公正証書遺言でなくても自筆のものであっても「遺言を作る」という機会を増やすべきだという考えが根底にあるものと思います。上記のように手書きしたものをスキャナで電子化してくれます。それはそれで「電子化」には違いありません。ただ、これは「始まり」に過ぎないと思います。「電子化」を推し進めると、何も「手書き」にこだわらず、ワープロで、さらには、始めから選択肢がセットされていて、「ピ、ピ」とボタンを選ぶだけで誰に何を相続させたいかを決めることに進まないか。(「遺言」という言葉こそ古臭くなってしまうので、「財産の配分意思選択」のようなことに変わるのではないか)

二つ目は、「遺言者が亡くなって相続が開始されると、この自筆証書遺言があることが通知される」という件です。戸籍の電子化が進んでいます。そうであれば、法定相続人が誰なのかということに関して、死後に誰かが戸籍を全部取り寄せてたどる必要もなく、本来、自動的に役所はデジタルに答えを出せているのではないかと思う次第です。これを開示することで、手間が大きく減ります。

以上、「ボタン選びの財産配分」、「法定相続人の自動表示」をぜひ、進めていただきたいと思います。行政書士業務が大きく減ることになりますが。