少しVISAの勉強を

新型コロナウィルスをめぐる世界的な混乱はもう少し続くようです。

昨日の新聞に、『米、一部就労ビザ発給停止 「米国民の雇用確保」』という記事が掲載されておりました。「トランプ米大統領は22日、IT技術者が多く利用する「H1B」などの査証(ビザ)の新規発給を年末まで停止する大統領令に署名した。企業内転勤者向けのLビザも対象で日本企業にも影響が出そうだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた米国民の雇用を確保するためと説明している。」という内容です。

ビジネスで海外に渡航する方は、ご自分あるいはその会社がよく事情を調べていることと思いますが、あらためて、「アメリカの就労ビザの仕組み」をまとめてみました。

【米国の就労ビザ】ビザの種類と資格
◆H-1B (特殊技能職);事前に取り決められた専門職に就くために必要。
◆H-1B1(自由貿易協定専門家ビザ);チリとシンガポール国籍者限定。
◆H-2A (季節農業労働者);一時的に農作業に就く目的のビザ。
◆H-2B (熟練・非熟練労働者);一時的、季節的かつ米国労働者が不足している職業に就労。
◆H-3 (研修生);大学院教育やトレーニング以外にも分野を問わず、雇用主が行う最長2年間の研修を受ける目的で渡米する方が対象。研修の報酬を得ることができ、また実践的作業も許可される。
◆H-4 (同行家族); H ビザの保有者の配偶者および未婚の子ども(21歳未満)がビザの保有者と共に米国に滞在するための家族用ビザ。
配偶者/子どもは米国滞在中に就労することはできません。
◆L-1 (企業内転勤者);多国籍企業の従業員が、米国内の親会社、支社、系列会社、子会社へ一時的に転勤する場合のビザ。
◆ブランケットL-1ビザ;企業内転勤となる多数の駐在員のためのビザが必要な会社が対象。既存の会社で役員、管理職、専門職として働く方のみが対象。
◆L-2 (同行家族);L ビザの保有者の配偶者および未婚の子ども(21歳未満)がビザの保有者と共に米国に滞在するための家族用ビザ。最近の法改正により、配偶者は就労可。子どもは就労することはできません。
◆O ビザ;科学、芸術、教育、事業、スポーツにおける卓越した能力の持ち主、または映画やテレビ製作において卓越した業績を挙げた人ならびに、それらの遂行に必要な補助的な業務を行なう人に発給されます。
◆O-2(O-1同行者);O-1ビザ保有者と同行し、競技や公演に不可欠な役割を担い、米国には存在しない技能と経験を有する方が対象。
◆P (芸術家、芸能人);活動のために渡米する特定の運動選手、芸能人、芸術家および必要な補助的な業務を行なう人に発給されます。
◆P-2(芸術家または芸能人);相互交流訪問プログラムに基づき、渡米する芸術家または芸能人に認められます。
◆P-3(芸術家または芸能人);文化的に独自なプログラムの中で公演・訓練・指導を行なう個人またはグループの芸術家または芸能人に認められます。
◆Q ビザ;実地訓練、雇用、および訪問者の国の歴史・文化・伝統の普及を目的とした国際文化交流プログラムに参加するために渡米する人に発給されます。

以上、多岐に渡っており、細部に差異はあるものの、「米国労働者が不足している職業」に限定となっているものなど、基本的な考えは、国内の雇用を守ることが前提にある点では、日本の場合も同様です。

今回の措置は、『「数種の非移民ビザによる労働者の受け入れは、経済回復の間に米労働者の職を奪ったり不利にしたりする危険を及ぼす」と主張。大統領令は、非農業季節労働者向けのH2Bビザ、Hビザ労働者の配偶者向けのH4ビザ、企業研修生など就労を目的とする交流訪問者向けJビザも発給停止の対象とする。』という意図で、コロナ影響で経済が低迷し失業者が増加しているなかで、まずは米国人の就労機会を確保するという狙いがあります。

トランプ大統領の言動は、中途半端なところがなく、賛否あると思いますが、「わかりやすい」ものです。全世界規模での経済の低迷が起きているのが事実ですが、必要以上に国際間の緊張を招かないでもらいたいと願います。

(イラストは icco さんのもので「illust AC」からいただきました)