行政のDXについて(3)
新型コロナ対策で、PCR検査対応や保健所の対応が不十分だと指摘を受けたり、定額一次給付金の支給が名簿台帳から手作業のため遅いと批判されたり、今度は、広く国民にワクチンを接種する段取りを検討したり、とにかく、自治体はたいへんな業務をこなさなければならない部署です。
それらは行きつくところ、「住民基本台帳」というデータベースがあって、そのデータの利用に関する課題ということになります。多くの自治体は、住民との対面による業務が基本で、電話やメール、FAXといったコミュニケーションスタイルで対処しています。そこを変えていこうというのが、「行政のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」だと理解しています。
やっかいなことに、地方自治法が何度か改正され、現在、それぞれの地方自治体は、「上下関係」にはありません。つまり、都道府県は国の「下請け組織」ではなくなっていますし、市町村も都道府県の「出先機関」ではありません。一口に「地方自治体」と呼んでも多数の組織内の仕組みや手順をほぼ同じ業務フローに変革していく、ということは考えただけでも、たいへんな難題に思えてきます。
そこまで多数の組織ではないものの、36か国からなる「EU」は、国をまたぐ場合であっても、同じサービスを迅速に提供できるようにするという点で、同様の課題に取り組んでいます。そこを少しみていきます。
「欧州電子政府行動計画2016-2020」(European eGovernment Action Plan 2016-2020)というものが出されています。
「私たちの時代の産業革命はデジタルです。…企業が単一市場全体でのスケールアップを目指しているため、公共のeサービスも今日のニーズを満たす必要があります。」と明記されています。」
「電子政府行動計画2016-2020は、この機会を認識しにボーダレス、パーソナライズされた、ユーザーフレンドリーな、エンドツーエンドのデジタル公共サービスを提供し、欧州連合の行政や公的機関、オープン効率的かつ包括的に作るために野心的なビジョンを提案しています」横文字がいろいろ登場しますが、だいたいの趣旨は理解できるものと思います。
「アクションプランには、専用の予算や資金調達手段がありません。ただし、さまざまなEUプログラムを通じて加盟国が利用できる資金源とそれに伴う措置を調整するのに役立ちます。」
機械翻訳なのであやしい日本語ですが、EUのデジタル・ガバメント施策では、まず目標を設定する、それを実行するために、欧州36か国間が競争し協働させるようなスコアカード「eGovernment Benchmark」を設けるという仕組みになっています。
これはうまいやり方だと思います。上部の組織が箸の上げ下げまで口出しするのではなく、目標を与え評価項目と結果のチェック表のみを統一して与える、そして、いつまでに達成すべきだという期限を設ける、そのための一定の共通予算を確保しておく、というようなやり方だと理解しました。
この手法を日本も採用するかどうかはさておき、この手法では、途中のアプローチは、それぞれの国情によって差異はあるものの、「ゴール」は等質のものが達成できるものと思われます。そこに競争を持ち込むということ自体、お役所の中に新しい風を起こすような期待感を持っています。
(いらすとやさんから画像をいただきました)