紆余曲折はさけられません

少し昨年を振り返ります。

全国民に一律、一人10万円の定額給付金が至急されました。市区町村は全国民の住所などのデータを掌握しているので簡単に実施されるものと予想しておりましたら、住民の側から振り込み口座を連絡する必要があった関係で、役所の事務がたいへんな状況になりました。当時は、マスコミも肝心なときに役にたたない「マイナンバーカード」もやり玉にあげて、何度もニュースになりました。

マイナンバーと口座番号が紐ついていない問題ですね。納税の際に口座番号を通知するケースもありますので、そのようなデータを役所が垣根なく情報を蓄積していけば、いざというときに困らないものと思いますが、提出した情報はその目的に限られるもので

他に流用しないという個人情報保護法の壁があって、ややこしいことになります。

さて、その際の事務処理をうまくこなした自治体の事例として、武蔵野市の事例紹介の記事を読みました。

7万件超の10万円給付を支えた、AI-OCRとRPAによる自動入力

「武蔵野市は、AI-OCRとRPAを申請処理に活用し、都内トップレベルの迅速な給付を実現」ということです。補足しますと、住民から郵送される手書きの申請書をスキャンして、「AI-OCR」で、その画像をデジタルな文字情報に変換します。さらに、それをエクセルのような表形式に整えるのが「RPA」の役割です。
*RPAとは「Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション」の略語で、ホワイトカラーのデスクワーク(主に定型作業)を、パソコンの中にあるソフトウェア型のロボットが代行・自動化する概念です。

記事によれば、7万人のデータを11日で処理できたことが画期的だと評価しています。たしかに、地道に人海戦術でこなした自治体が多いなかで画期的な取り組みだったものと思います。職員の方の省力化に寄与したものと思います。

今、冷静に考えてみますと、「11日」という期間は短いものなのかどうか。一方で市側にはきちんと住民のデータがあり、今回は、個人を絞りこむ必要はなく、「全員に支給」するというJOBですので、口座番号が紐つけば、クリックひとつでできそうな気がしたものですから。

また、「紙で申請書を提出する」という手順を次回から省略するような仕組みづくりもできたチャンスだったのに、2020年の定額給付金支給のために申請された振り込み口座は、他の目的に流用できないので、シュレッダーにかけられているものと思います。残念です。

今回の緊急事態では、再び、国民全員に定額給付金を支給されるということはないのかと思いますが、昨年、「早く!早く!」とせっつかなければ、あるいは、デジタルな仕組みの第1歩として、「全国民がマイナンバーカードを持ち、銀行口座と紐つく」という状態が作れたかもしれないので、たいへん残念です。

まあ、済んだことは済んだこと。

残念なのは、「マイナンバー+スマホで申請できない人は郵送でも受け付けますよ」というような、日本の行政組織の「親切さ」が、いつまでも変革の妨げになっているような気がしてなりません。

(公開されているスタジオジブリの「耳をすませば」からイラストをいただきました。本文とは関係がありません)