「押印廃止」=「デジタル」ではないこと

行政手続きから無用な押印を無くすることの一環として、今年の1月1日から、例えば、建設業の各種申請様式の押印が不要との政令が出されました。

前後しますが、昨年の12月18日付で、内閣府から「地方公共団体における押印見直しマニュアル」というものが公表されています。今回の政令もこの考え方に沿ったものです。

行政改革ご担当の河野大臣がさかんに「印鑑廃止」を説いていましたので、今回の措置は既定の路線と言えますが、具体的になる前は、各種手続きの押印廃止に伴って別のデジタルな証明、例えば、マイナンバーカードによる本人確認がそれに代わって必要になるのではないかなどの懸念を持っておりました。そういうことになれば、かえって、申請者に面倒を強いることになりかねないという観点です。そうならないようなので、一安心しております。

内閣府の資料によれば、「見直しの手順としては、押印を求める根拠ごとに手続を分類したうえで、求める押印の種類や手続の内容・目的等に鑑み、(a)押印を求める意味、(b)趣旨の合理性、(c)代替手段の可否、の視点から手続を評価して、押印見直しを行うこととし、(ⅰ)~(ⅳ)の場合には押印を求めないこととしました」としたうえで、
(ⅰ) 法令の条文、省令・告示の様式のいずれにも押印を求める根拠がないもの
は、押印を求めない
(ⅱ) 省令・告示の様式のみに押印欄がある手続は、登記印・登録印を求めている
など特段の事情がない限り、基本的に押印を求める積極的意味合いが小さいと考えられることから押印を求めない
(ⅲ) 法令の条文で押印を求めている手続や、省令・告示の様式のみに押印欄があ
る手続であって押印の種類、行政手続の内容・目的・趣旨に照らして、押印を求める積極的意味合いが大きいと認められる事情(合理的な理由があって登記印・登録印を求めている等)が認められる手続においても、押印が求められている趣旨に照らして押印を求める合理的理由が認められない場合は、押印を求めない
(ⅳ) 法令等の条文で押印を求めている手続であって、押印が求められている趣旨
に照らして押印を求める合理的理由が認められる場合においても、他の手段により押印が求められる趣旨を代替可能なものは、押印を求めない

「なお、認印については、押印が求められている趣旨に対する効力が極めて限定的で
あるとされ、その後の国会答弁においても、認印は個人の認証としての効力は乏しい
との見解が示されています。」

これが出されるまでは、「登記印」が必要なものは対象外なのかと想定しておりましたが、それさえも、本来の趣旨に照らして、合理的理由がない場合は押印不要とすべきであるとこのマニュアルは説明しています。そこまで徹底して見直されるのであれば、完全に「認印」は廃除されることになると期待できます。

こういう作業は、「デジタル庁」の出番ではなく、各行政単位で法令の改正とセットで広範囲に行われていくものと思われ、今年は、目が離せません。

(公開されているスタジオジブリの「耳をすませば」から画像をいただきました。本文とは関係ありません)