「ハンコ文化を問う(下)」を見過ごしていました

日経新聞の特集記事に「ハンコ文化を問う」というものがありました。

上;10月26日「明治時代にも論争」

中;11月2日「電子署名の普及阻む」

ときましたので、11月10日前後に「下」の記事が掲載されるものと想定しておりましたが、なかなか載りません。あきらめかけていましたら、

下;11月23日「脱却への準備着々と」

という記事がすでに掲載されておりました。前2編が歴史を踏まえたたいへん面白い記事でしたが、「下」は、今の政府がやろうとしている、最近、よく見かけるような内容の記事でした。

注目すべき点は、以前の記事にもあったのですが、「ハンコ重視」の文化を日本に産んだのは、①印鑑証明、②民事訴訟法228条4項の二つだというものです。

「印鑑証明」は、よく知れたところで、本人が確かに作成した真正な書類であることを証明するための手法です。

問題は「民事訴訟法228条4項」です。

(文書の成立)
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

これです。「ハンコ文化を問う」(下)の記事は、続きます。

「これに対し内閣府、法務省、経産省は6月に認め印の代替方法を示すQ&Aを公表した。『押されたハンコが実印ではなく、いわゆる認め印である場合は、私文書が正しく作成されたと簡単には証明できない。(むしろ)相手方と継続的な取引がある場合は、メールアドレスや本文、日時などの送受信記録が保存されていれば、文書が正しく作成されたと証明する手段となる』という。

実は、6月に同様の記事が掲載されているのですが、それはともかく、政府が言わんとすることは、継続的な取引関係にある者同士のメールなどのほうが三文判よりも文書が真正に本人のものだという証明になる、というものです。

だから、三文判を押すルールになっている申請書類は取りやめることができる、という流れになっています。

前段の「印鑑証明」には、今回、手を付けないようです。不動産や会社の登記に関係する司法書士の専任業務を犯すことになる、という配慮が働いたからなのかどうか。

ともかく、せっかく、「中」で、印鑑は海外のように電子署名にとって代わるべき、という主張が展開されるものと想定していましたが、その議論は、日経新聞としては、いったん、棚上げと読めます。政府の主張の追認という側面があるように思いますので、ここは、すなおに「マイナンバー」の活用の進展を見守りたいと思います。

(スタジオジブリの公開されている画像のうち「魔女の宅急便」からいただきました。本文とは関係ありません)