宅建士試験で民法が、行政書士試験で不動産関係が出題されること

昨日まで、10月に実施された宅建士試験の問題のうち、問1~問14の「民法」に関する内容をざっとみてきました。先般の民法改正の内容に関するものが多く出題されておりました。

一方、11月に実施された行政書士の試験の問題をみる機会がありました。行政書士試験の場合は、憲法や行政法からの出題がある関係で、出題数の点では、60問中、民法は択一式で9問しか出題されません。際立って改正民法の知識を問う問題は見当たりませんでした。

ただし、行政書士試験の特徴として、4つの短文から正解を選ばせる「択一式」のほかに、事象を把握して45文字以内(40文字程度)で回答させる「記述式」の問題が3問あります。今年の問題の特徴として、3問とも、土地や不動産に関する文章題でした。

宅建士受験者としても興味のある問題でしたので、その3問をみていきたいと思います。

問44は、土地の区画整理に関わる「換地処分」についてのものです。
区画整理事業の範囲内に宅地を持っています。この換地処分が違法なものであると取消しの訴えを提起しようと考えたが、すでに出訴期間が終わっていたという事情です。
さて、どうすればいいかという問いです。

これは「行政事件訴訟法」を勉強すると典型的な問題として出てくるものですので、思い出せた人はわりと書けたのではないかと思います。方法としては「無効等確認訴訟」がその答えになります。この土地区画整理事業は「土地区画整理組合」が計画を策定しているということですので、解答は、「本件組合を被告として、本件換地処分を対象として、無効等確認訴訟を提起すべき」ということになります。

問45は、土地の売買に関する、詐欺や錯誤に関する契約の取り消しができるかを問う問題です。登場人物が二人ではなく第三者も関係してきます。出題を要約すると、
・AとBとの間で、Aの土地をBに売買する契約を締結した
・Aが売却に至ったのは、日ごろから恨みを持っているCが土地に戦時中の爆弾が埋められており、いつ爆発するかわからないと告げた
・AはそれをBに伝えたうえで、その土地を時価の2分の1で売却した
・売買から1年後に、cから騙されたことを知ったAは売買契約を取り消せるか
こういうややこしい設問です。
試験実施機関からの正解を見ておりませんが、この設問は複雑すぎて、塾などの回答は一つではなく、3通りになっています。
①AがCに騙されたことを、Bが知りまたは知ることができた場合、Aは取り消すことができる
②契約から1年経過しているだけなので、第三者の詐欺又は錯誤を理由として取り消すことができる
③契約の基礎として錯誤の事実がBに対して表示されているので、取り消すことができる
ちなみに、②で、取消権の事項は、追認することができるときから5年、行為のときから20年というのが民法の定めなので、1年後というのは全く問題なく事由があれば取り消せる期間内です。
さて、出題者はどういう狙いだったのか。(それにしても、「戦時中の爆弾が埋まっている」という設定は、過去の判例にあったのかもしれませんが、もう少し現代的な条件設定ができたのではないかという気がします。例えば、Aが購入する前は工場の土地で廃液に有毒な化学物質が含まれていて地中に漏洩していたらしい、とか)

問46は、不動産の登記の問題です。この問題も第三者が登場します。
Aから不動産を買い受けたBですがまだ登記を済ましていません。それを知った日頃Bに対して恨みを抱いていたCが、Aをそそのかし、Bを害する目的で不動産を二重にCに売却させて、Cは登記を完了したのち、Dに転売して移転登記をしたということです。悪いやつがいるものです。
BはDに対して不動産の取得を主張できるか、という問いですが、続きがあって、判決文の要点が書かれています。「Cは背信的悪意者ではあるが、D自身が背信的悪意者と評価されるものでない限り、転得者のDはBに対抗しうる」とされたということです。さて、どういう理由で、そのような判決がだされたのか、ということを問う問題です。たいへんややこしい。しかも、解答は、Cのことを指す「背信的悪意者は」のあとに続く文章を作りなさいということです。
背信的悪意者は「登記の欠缺(けんけつ)を主張することが信義則に反するに過ぎず、AC間の売買は無効ではないから」
というのが解答だということです。

そういわれれば、そうかもしれませんが、Bとしては納得できないでしょうね。不動産を買い受けたのに登記を怠ったということが敗因ということに尽きる話でした。

以上の3題は、この範囲まで勉強をしていれば、正しく解答を書けたかもしれませんが、なかなか手ごわい問題だったものと思われます。

それにしても、悪意のある人がいろいろ登場する問題の連続でした。

(スタジオジブリの公開されている画像のうち「紅の豚」からいただきました。本文とは関係ありません)