宅建士試験から実務的な改正民法の事例②

約120年間ほとんど変わってこなかった「民法」の大改正がありました。宅建士の試験問題にも多くの民法改正の内容に関連する質問が出されました。そのあたりを勉強していたおかげで、試験では役に立ちました。

正面から試験の解説をしたいわけではありませんが、実務面で役に立ちそうな点を拾ってみたいと思います。50問中14問が民法関係でしたので、本日は前半の7問まで。

問4は、賃貸借契約の期間満了に関するよく出る問題です。借りている人は原状回復義務があり、敷金がそれに充てられるということになっています。したがって、契約が終わって借屋を出ていくわけですが、出ていく前に預けてある敷金を返してほしいという要求に対して、大家さんの立場としては敷金は返還しますが、その前に出ていくこと、「貸借物の返還を受けるまでは敷金の返還を拒むことができる」というのが正解でした。また、家賃の滞納があったときに借りてる側が預けてある敷金をその弁済に充てるよう大家さんに求めることはできないということも合わせて覚えておきたいと思います。

問5は、委託契約の問題です。「委託」と似たものとして「請負」があります。「委託」は、個別の契約となるのでどのようにでも内容を細かくしたり詰めたりできます。一方の「請負」は、業務を遂行した結果に生じた成果物に対しての責任を持つもので、そこに大きな違いがあります。なお、委任契約には報酬を伴うものと無償のものがあります。
出題の内容は、報酬を支払う条件の委託契約の場合で、受託者の責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、報酬を請求できるかということを問うものです。その場合、委託を受けた側の責任ということですので、「報酬を請求することができない」というのが正解でした。

問6は、売買契約の場合で、錯誤による取消の問題です。「錯誤」とはわかりやすく言えば「つい、うっかり」ですが、いろいろなケースがあります。一般的には、内心の意思と表示した内容とが食い違っていることをその人自身が知らないことと定義されています。
出題は、取消できるものはどれかという4択でした。
①重大な過失があって100万円で売却するつもりだったものを10万円で売ると言ってしまった
②時価100万円のツボを得る側が10万円と思いこんでいて「10万円で売ります」と言って売買が成立した場合
③時価100万円の名画を贋作だと思いこみ、「贋作なので10万円で売ります」と言い、買う側も「贋作なら10万円で買います」と契約が成立した場合
④100蔓延の腕時計を外国人に売却する場合、為替レートが1ドル100円のところ、重大な過失によって「80万円で売る」と言い、そのような為替の勘違いを知らない相手が「80万円ならば買う」として売買契約が成立した場合
⇒正解は③でした。「動機の錯誤による意思表示の取消は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる」ということです。③だけ「贋作なので」とはっきり売る側が根拠を事前に言っています。

問7は、保証契約についてです。誤っているものを選ぶものです。出題も難しいのでいきなり答えです。
「主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ」
これは二つのことが並べられていますが、前半も後半も間違いです。保証契約の締結後に加重されたものについては保証人の負担は加重されない、消滅時効完成の利益を債務者が放棄しても、その効果は保証人には及ばないというものです。

この種のクイズのような設問は、割と好きです。好きでなければやってられませんが。

(スタジオジブリの公開されている画像のうち「平成狸合戦ぽんぽこ」からいただきました。本文とは関係ありません)