印鑑にまつわる様々な知識

印鑑が近い将来、書や絵画などの作品に作者の証として捺印される、落款印(らっかんいん)のようなものを除いて、行政手続きからは、すべてなくなるのでしょうか。従来から、その流れはあったものの、菅内閣に代わってから、それが加速しているように感じます。新聞などでも、特集記事を組んだりしていますので、ここへきて、消えていくものながら、知識が増えていきます。

日経新聞でも、10月24日(土)から、毎週土曜日、3回のシリーズで「ハンコ文化を問う」という記事が掲載されています。それによると「ハンコの原型といえる円筒印章を発明したのは、世界四大文明の⼀つであるメソポタミア文明の最初の担い手、シュメール⼈だった。」ということを初めて知りました。最初から中国で生まれたものと思っておりました。西洋に近いところが発祥の地だったとは意外です。

「ハンコ⽂化はその後世界に広がり、⽇本は遣隋使を通じて中国から⽂化を取り⼊れた。」やはり。

ただし、「明治時代、ハンコと署名を巡る論争が起きた。1870年代の太政官令は証書に署名と実印の両⽅が必要と定めた。法案を作った司法省は偽造しにくい署名を普及させたかった。ただ、字の書けない者も多いため、すぐにハンコをやめて署名に切り替えるのではなく、両者を併存させて署名に習熟させる趣旨だった。」--これも、知らない知識でした。西洋にならって、署名が普及していれば、かなり違った展開になっていたものと思われます。これに大反対したのが、大蔵省と銀行だったというのもうなづけます。

ところで、印鑑を押す行為を意味する「捺印」と「押印」は違いがあります。一般に「署名捺印」と「記名押印」と使い分けられています。「署名」はいわゆる本人が手書きでするサインのこと、「記名」は手書きではなくゴム印、ワープロで印刷して氏名を表示すること、証拠能力の観点では、「①署名捺印 >② 署名のみ >③ 記名押印 >④記名のみ(正式な効力なし)」の順になるとされています。

今の法律のままでも、手書きのサインのほうが「三文判」よりも証拠能力が上になっています。このようなややこしさも、印鑑廃止にともなって、すっきりと廃れてしまうのでしょうか。

(イラストの著作権はジブリです。本文とは関係ありません。「コクリコ坂から」のものです)