はんこ文化に代わるもの
行政手続きのデジタル化のスタートとして「はんこ使用の原則禁止」という方針を河野行政改革大臣が表明して、その方向に動き出しています。
長く続いてきた文化ですので、われわれ日本人にとって、役所に提出する文書や契約書の署名蘭に名前を書いただけでは落ち着かなく、印鑑が欲しくなります。やがて、印鑑のない文書にも慣れるのでしょうか。
ただ、ここで、印鑑に代わるものとして「電子印鑑」が登場するのか、あるいは、「マイナンバーカード」があらゆる行政への申請や、民間の商取引の場面で登場することになるのか。とにかく、すんなりと印鑑を押す行為だけが姿を消すといってもらいたいところですが、そうならないケースに注目していきたいと思います。
例えば、自動車を購入することを考えてみます。「今の制度では実印が必要ですね」と思った方は半分正解です。
一言で言うと普通自動車を購入する場合は実印が必要で、軽自動車を購入する場合は実印は必要ありません。軽自動車は新車でも「三文判」で購入することができます。軽自動車の場合には、国土交通省への登録ではなく、軽自動車審査会に必要書類を出すからとされています。今時、地方へ行くと、鉄道などの公共交通のインフラが少ないため、自動車は大事な足であり、家族全員が1台ずつ軽自動車を保有しているようなケースをお目にかかります。「実印」が不要で軽自動車が買えるというのはいい制度だと思います。これが、「印鑑不要」と言われだしたとたんに、「三文判」に代えて「マイナンバーカード」で購入手続きをする、ということになるのかどうかというあたりが気になるところです。
ついでながら、普通自動車を購入する場合でも、所有者が自分ではない場合は、実印は必要ありません。 最近増えている、マイカーローンやオートローンなどのローンを利用して自動車を購入する時です。所有者はローン会社のものだから、国土交通省への登録は本人ではないからです。この場合も、「三文判」で済んでいましたが、どうなるのでしょうか。
これも今後の宿題としたいと思うのですが、法律の改正によって「印鑑不要」という書類に、今までのノリで印鑑を押してしまった場合、役所はどういう態度をとるのでしょうか。「印鑑を押させた」ようにとられるので、役所の窓口の担当者は上司に叱られることになるのでしょうか。印鑑無しの文書に「書き直し」を命じるような気がしますが、どうなんでしょう。
(ジブリに著作権がありながら、ご使用はご自由にというあたたかい配慮で今回も映画の1枚を使わせていただきます。本文とは関係ありません)