行政手続きからいよいよハンコが要らなくなる

「経済産業省の梶山弘志大臣は10月2日の会見で、同省の約2000種類ある全ての行政手続きで押印を廃止する検討を進めていると明らかにした。庁舎管理の手続きなど省内での手続きに必要な押印も全廃を検討する。」

いよいよ、動き出した感があります。ご存知のとおり、河野太郎行政改革・規制改革大臣が、行政改革の象徴として「行政手続きのハンコ廃止」に本格的に取り組もうとしています。

本来、行政手続きは、それぞれ提出書類などを決めている法律があるので、経済産業省だけでも約2000種類もあるのであれば、「ハンコ廃止」とするのは、なかなか難しい手続きが要るのではないかと予想していました。

これに対して、10月2日の報道では「押印が要らないだけで個別の法改正は大変だ。廃止の一括法も検討する必要がある」というのが河野大臣のお考えです。つまり、ひとつひとつ、この申請書類には印鑑は不要ということだけのために法律を起こすのではなく、ひとつの法律で一括して、「これこれの場合には印鑑は不要」とやってしまえるということです。

この少し前に、2020年6月19日付で、内閣府、法務省、経済産業省の連名で「押印に関するQ&A」というものが出ています。つまり、印鑑が不要になる場合、契約上の手続きは一体どうなるのか、という疑問に答えるものです。

https://www.meti.go.jp/covid-19/ouin_qa.html

Q:契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。

A:私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

簡単です。「契約」というものは、たしかに、「当事者の意思の合致により、成立」するものであって、書面がなくても、実は合意があれば契約は成立します。ただ、後になって、「言った、言わない」という認識の違いを解消する目的で、書面に合意内容を書いておくというのが契約書の役割です。そこには「特段の定めがある場合を除き、押印は不要」ということで一件落着です。

あとは、行政手続きでも、「ここに押印すること」となっているものをあらためればオシマイになります。

Q&Aにはこういう記載もあります。

「形式的証拠力を確保するという面からは、本人による押印があったとしても万全というわけではない。そのため、テレワーク推進の観点からは、必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、「重要な文書だからハンコが必要」と考える場合であっても押印以外の手段で代替したりすることが有意義であると考えられる。」

ちょっと気になるのは「押印以外の手段で代替したりすること」というくだりです。例えば、市役所で住民票の写しを求める際に、今は百円で買える「三文判」を押すことで用が足ります。すんなり廃止してほしいところですが、「代替手段」として、マイナンバーカードや暗証番号を求める、というようなことに向かわないことを願っています。

いや、そもそも、デジタル化が進めば、「住民票」の写しを、別の官庁の申請書類に添付する、という行為そのものが不要になるのか、考え過ぎかもしれないと思いなおしました。

(ジブリに著作権がありながら、ご使用はご自由にというあたたかい配慮で今回も映画の1枚を使わせていただきます。本文とは関係ありません。「千と千尋の神隠し」から)