「基準値」と「規制値」は行政の種類によって使い分けがされていること

芸能人の方が酒気帯び運転で逮捕されたことがニュースになっています。
「呼気から『基準値』を超えたアルコールが検出された」と。
皆さんは、いかがでしょうか。私はたいへん違和感を感じました。
「基準値」は、英訳すると、「Standard value」であり、これは、良い方向の目標値として使われるものではないか。
逮捕されたということであれば、「規制値」なり、別の用語が適切ではないかと感じたものです。
ただ、誤用ではなく、どのチャンネルのニュースでも判で押したように「基準値を超えたアルコール濃度」と言っています。
 
少し調べてみますと、「基準値」と「規制値」の両方を使いわけているものがありました。
 
◆大気中の「二酸化硫黄(SO2)」濃度の場合
環境基準としては、「1時間値の一日平均値が0.04ppm 以下であり、かつ、1時間値が0.1ppm 以下であること。」と、一般の大気中における濃度が定められています。行政はこれを目標に、当該物質の濃度が環境基準を満たすように、二酸化硫黄の発生を抑える施策を実施します。具体的には、規制基準として大気汚染防止法の中で硫黄酸化物(SOx)の“排出基準”が定められており、ボイラーや焼却炉といった、当該汚染物質の発生源での濃度が規制されています。
⇒ここでは、「基準値」があって、その環境基準を満たすように、現場の運用で「規制値」を設けた、という流れです。
 
◆食品中の放射性セシウムの量
・飲料水の規制値;200ベクレル/kg
・飲料水の基準値;100ベクレル/kg
規制値においては、放射性セシウムの年間線量を5ミリシーベルトと設定していましたが、その水準でも、健康への影響はないと一般に評価され、安全性は確保されていました。しかしながら、現行の基準値は、長期的な観点から1ミリシーベルトに引き下げたもので、より一層、食品の安全性が確保されています。
⇒これは、上記の事例と逆です。規制値で十分に健康が確保できるものの、より安全側の数値として「基準値」を設けたというものです。
 
どちらが日本語として適切なのか、という類のものではなく、それぞれの行政の規制のやり方の差異に基づくものと理解しました。
 
そこで、自動車運転に関するアルコールの問題ですが、この用語は、正しく使えば、「飲酒運転取り締まり基準」を省略したものであることがわかりました。警察が取り締まる際の「基準になる数値」という意味合いです。一方、「規制値」という用語は、その「規制値」を皆が守っているのかどうか、全員を検査するというようなケースに用いるべきものであって、この場合は、やはり「基準値」という用語が適切なのだろうと感じた次第です。
 
そのように、各行政のやり方によって、「規制値」と「基準値」というものがありうることを再認識しました。
(著作権がジブリにありながら使用はご自由にという作品から今回もこの絵をいただきました。本文とは関係ありません)