デジタル化が進んでいる韓国の「行政士」と「電子訴訟」について
世界各国が行政手続きのデジタル化を競っています。そんななかで、韓国では、10年前から、住民票、転入申告、納税証明など1750種類の書類をオンラインで申請し、受け取ることができるということです。その結果、転入時は、健康保険、年金、国税、地方税、自動車登録元帳、免許、予備軍関連、印鑑情報などを一括変更でき仕組みができあがっており、利便性の高さ、住民への浸透度などどれをとっても世界最高水準にあります。
以前は韓国にも日本にならって「行政書士」という資格がありました。しかし、このように各種の行政手続きがデジタル化されていくと、めんどうな行政手続きを申請者に代わって手続きする役割も必要がなくなっていきます。
現在は、資格の名称から「書」の字が取れて、「行政士」という職業が残っています。ただし、日本でも少数ながらそのようなルートがあるのですが、韓国の「行政士」は国家試験を経ず、国家公務員のOBに資格を与える制度となっているようです。というのも、この職業に就く若者がいないということです。
行政手続きだけではなく、韓国では、一般の訴訟手続きも「電子化」されています。
https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/article/e37ddb6351021213.html
電子訴訟の制度は2010年から始まっているということで、かなり進んでいます。特許から始まって民事に拡張され、現在は、刑事訴訟を除くほぼ全ての事件に電子訴訟が導入されているとのことです。
「電子訴訟の長所としては4つ挙げられる。第1に、非常に迅速である。インターネット(オンライン)経由で事件処理や電子文書を送ることで時間を短縮し、裁判期日をより早く指定することができる。第2に、当事者や弁護士にとって極めて便利な制度である。裁判所を訪問することなく、インターネットで訴訟書類を提出することができ、記録閲覧、コピー手続きも簡単だ。第3に、訴訟中の情報をインターネットで共有することで裁判手続きが透明になり、手続きの公正性に信頼をおける。第4に、裁判所に提出した書類や個人情報が先端技術で保護されるため、書類の紛失や外部流出の心配がない。」とのことで、「裁判手続きの公正性や透明性、判決の予測可能性の向上」に大きな効果があったとされています。
残念ながら、先行している韓国から学びたいと思っても、日本人は漠然と「韓国よりも日本のほうが進んでいる」と思っているのか、詳細に解説した文献や記事をみつけるのがなかなかたいへんです。
我が国は、この分野では10年以上遅れているのは確かで、これから始まると言っても過言ではない状況ですが、行政手続きも「手書きの申請書と印鑑」の世界から徐々に変わっていくことと思われます。
(写真は、choeによる「Pixabay」からいただきました)