行政手続きのデジタル化;先行する韓国の事例
これまでも何度か、行政手続きの電子化、デジタル化が、我が国の政府の方針に掲げられたことがあるようですが、今回は、コロナ影響もあって、社会全体がデジタル化を受け入れる方向に向かっていますので、国と地方の行政のデジタル化もある程度、進展するものと期待が持てそうです。
世界各国における行政デジタル化のランキングで、常にトップ集団にいるのは韓国です。
「韓国では、住民票、転入申告、納税証明など1750種類の書類をオンラインで申請し、受け取ることができる。転入時は、健康保険、年金、国税、地方税、自動車登録元帳、免許、予備軍関連、印鑑情報などを一括変更できる。利便性の高さ、住民への浸透度などどれをとっても高い完成度に仕上げている。」
「韓国でここまで徹底した電子政府システムを構築できた最大の理由は、大統領制によるトップダウンの意思決定だという。歴代の韓国大統領は、その権限を十分に活用し、電子政府を推進してきた。」
これは、2010年、つまり、10年前の記事からの引用です。
https://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1009/06/news027.html
やはり、トップダウンで、強い権限をもって推し進めた結果のようです。
この記事では、日本がなぜ電子化が進まないのかということにも触れられています。理由が二つ挙げられていて、ひとつ目は「日本はどうか。日本には1800もの自治体があるといわれる。その多くが個別にシステムを構築しており、もし統一的な電子政府システムを日本でも構築しようとすれば、あるべき姿よりもまずは現状にどう取り組むかが問題になってくる。」
今回のコロナ対策の「PCR検査」の各保健所の対応もそうでしたし、1人10万円の「定額給付金」の支給の仕方もそうですが、それぞれの都道府県や市区町村が独自のやり方をしています。地域の特色に根差した、ということで、独自性をもつことが推奨されてきた流れがあるようですが、ときに弊害になります。
「もう1つは、個人情報保護法を含めた法制度面の壁である。韓国では、行政機関同士で個人の情報を活用して公的文書作成にも活用している。むしろ、ある住人の情報について「他の行政機関から提供を受けられる同じ情報を、住民から収集してはいけない」と電子政府法で定めている。」これは、大きい壁になります。10年前にこのように指摘されていて、その後、弱まる方向ではなく、むしろ、個人の保護の色彩が強まってきたのではないかと思われます。
我が国のマイナンバーカードの普及の遅れも、そのカードを持つことがどれだけ便利になるのかわからないという消極的な見解以上に、政府にいちいち個人の生活を管理されたくないという考えをもつ方が相当数おられるという事情もあるようです。
10年前と異なるのは、世の中の電子化が進み、行政の遅れが目立つようになってきており、他国と比較して住民が受けるサービスに支障があるようだということを多くの人が実感していることがあげられますので、何度も書きますが、今回こそは一気に進展することに期待したいと思います。
(写真は、Momoka15さんによる「写真AC」からいただきました)