骨太の方針原案;第3章 「新たな日常」の実現
東京都の7月16日の新型コロナによる新規感染者は280人台、過去最高になったとのこと。少しの気のゆるみが大きな感染拡大につながるようで、一人一人が気を付けなくては、なかなか収束へ向かわないものと思われます。
それを受けて、7月22日から始まる国の「GOTOトラベル」の対象から東京発着が除外されてしまいました。時期尚早ということでしょうか。大阪府や神奈川県が除外対象にならなかったことも含めて判断が正しかったのかはいずれはっきりするものと思われます。
並行して7月8日に出された経済財政諮問会議の「骨太の方針2020(原案)」(経済財政運営と改革の基本方針 202)は、「新型コロナウイルス感染症後の社会に向け、新たな日常を実現するための様々な政策を提案」ということで注目してきましたが、今回で最終とします。
第3章は「新たな日常」の実現、となっています。
実は、行政改革の取り組みとして、最も注目したいのがこの章です。ただし、
第1章 新型コロナウイルス感染症の下での危機克服と新しい未来に向けて
第2章 感染症拡大への対応と経済活動の段階的引上げ
の流れを無視して、唐突に行政の仕組みの改革は、なかなか取り組みにくいのではないかと危惧します。
実現性はさておき、たいへん画期的な内容になっておりますので、いくつか、ピックアップさせていただきます。
1.「新たな日常」構築の原動力となるデジタル化への集中投資・実装とその環境整備
(デジタルニューディール)
デジタル化やデータ活用そして価値観の変化等を通じてパラダイムシフトと呼ぶほどの大きな変革が世界全体で起きている。デジタル化の推進は、日本が抱えてきた多くの
課題解決、そして今後の経済成長にも資する。単なる新技術の導入ではなく、制度や政策、組織の在り方等をそれに合わせて変革していく、いわば社会全体のDXが「新たな日常」の原動力となる。感染症対応で明らかになったデジタル化の遅れや課題についての徹底した検証・分析を行い、この1年を集中改革期間として、改革を強化・加速するとともに、関係府省庁における政策の実施状況、社会への実装状況を進捗管理する。
2.「新たな日常」が実現される地域社会づくり、安全・安心の確保
感染症拡大により、テレワークの活用を通じて、場所にとらわれず仕事ができるという認識が広まりつつある。こうした動きは、多様な人材の活躍の場を広げ、付加価値生
産性向上につながるとともに、地方移住の可能性を広げるものである。「新たな日常」を支える地域社会や地方創生を実現していくため、首都圏において地方移住への関心が高まっているこの機を捉え、スマートシティの推進等を通じ、東京圏への一極集中の流れを大きく変えるとともに、観光や農林水産業といった地域が誇る資源を最大限活かして、強靱かつ自律的な地域経済を構築することにより、多核連携型の経済社会や国土の在り方を新たに具体化し、国・地方、さらに官民が協力してその実現を進める。
3.「人」への投資の強化 ― 「新たな日常」を支える生産性向上
感染症による学校の臨時休業により、公教育のオンライン対応の遅れが顕著になり、学びを止めないことが課題となった。学びにおけるデジタル化・リモート化を推進し、
優れた取組の横展開とPDCAの実行により、教育の質の向上と学習環境の格差防止に取り組み、子供たちの学びを保障する。
4.「新たな日常」を支える包摂的な社会の実現
今回の感染症拡大を契機として、柔軟な医療提供体制、データ利活用、健康予防の重要性が再認識された。社会保障制度の基盤強化を着実に進め、「新たな日常」を支える社会保障を構築するとともに、困難に直面している女性や若者などへの支援を通じた格差拡大の防止を図り、地域社会やコミュニティ等において必要となる人の交流やつながり、助け合いを充実するための環境を整備し、誰ひとり取り残されることない包摂的な社会の実現をしていく。
この方針を基本に、各省庁が来年度予算なり、具体策を検討していくことになります。少し気になるのは、今回のコロナ禍でも明らかになった、国と都道府県の関係です。
政府の答弁などでよく、「国と地方が一体になって」とさらっと話されますが、必ずしも、国と都道府県は一体ではなく、もっと言えば、都道府県は国の下請け機関ではないということですね。今後も「新たな日常」を巡っての施策に、その微妙な違いが現われてくるものと思いますが、それぞれの地域の住民にとって良い方向に向かうことを願っています。
(写真は、 熊澤充さんによる「写真AC」からいただきました)