入管問題の適正化へ向けた取り組み
入管問題は、人権問題に直結させて議論されることがあります。
「たとえ法を犯したとしても人格を尊重すべきである」などと。
昨日(6月16日)の日経新聞に「国外退去拒否に『罰則を』 長期収容対策、有識者提言」という記事がありました。
「国外退去を命じられたのに出国を拒んだり、一時的に収容を解く『仮放免』中に逃亡したりした外国人への罰則創設の検討を盛り込んだ。」とあります。
意外に感じられる方もおられるものと思いますが、今までは、「国外退去を命じられたのに出国を拒んだり」、「仮放免中に逃亡した」外国人への罰則規定がなかったということです。逃亡者に罰則を科すための「要件・基準」がなかったのです。何日間、行方がわからない状態が続けば「仮放免中に逃亡した」というような。
「国外退去」のほうは、国外退去命令後も何らかの理由で帰国できない外国人が増えているということです。国が分断されて紛争状態が続いているという政治的な問題を抱えている人もなかには存在すると思われますが、そのほかに、母国に戻っても仕事にありつけないなどの経済的な理由を持っている人も少なからず含まれていることと思います。ただし、日本に上陸したあと、何らかの理由で「国外退去」を明示られてわけで、犯罪を犯したなどの素行不良なのか、あるいは、そもそも入管手続きなどに不正があったのか、我が国の社会が受け入れられないと判断した人たちです。
データをみてみますと、施設の収容者は昨年末時点で1054人。うち462人が国外退去に応じず6カ月以上の長期収容となっているということです。つまり、4割以上の人が国外退去を拒否している人に相当します。
新聞報道にも書かれていますが、「難民認定申請中は送還が停止されることから、退去を避けることを目的にした申請が増加している実情があるとし、同じ理由で申請を繰り返す外国人は停止の例外とすべきだとの意見もあった。」ということも特筆すべき点だと思われます。つまり、本来、難民認定に該当しないのは明らかなのにも関わらず「難民認定申請中」は強制送還が停止されることを利用して、何度も申請を繰り返して「申請中」を理由に日本に留まる人が相当数いるということです。
このような施設のなかで、例えば新型コロナウィルスの感染者が出ると、またたく間に施設内に蔓延するおそれがあります。そこで、今回の有識者の提言には「施設での常勤医師の確保など医療体制の改善」も求めています。
一方で、介護や建設業などの分野で、技能実習や特定技能の資格で働き、日本社会に貢献される人々は今後とも増加が見込まれています。われわれの側の意識も「外国人」として一定の壁を設ける感覚は時間をかけて是正していくことが求められるものと思われます。
そのためにも「国外退去を命じられたのに出国を拒んだり、仮放免中に逃亡したりした外国人への罰則」などについては、適正な措置が施されるよう、今回の有識者からの提言を受けた今後の検討に期待したいと思います。
(写真は、ここやんさんによる「写真AC」からいただきました)