ITがらみの法案にも注目していきます

女子プロレスラーの木村花さんが、SNS上で誹謗中傷を受けた後に亡くなったということに関連して総務大臣の高市早苗先生が法改正に取り組んでいます。『プロバイダ責任制限法』です。
この種の法律の取り締まり方は、簡単には理解しにくく、かえって、マスコミなどから、「表現の自由を侵害するものではないか」とか、さらには、「この機会に乗じて政権批判を封殺することを狙っているのではないか」というようなことまで言われています。

問題となる発言をした「匿名」の人を被害者の側が特定したいというときに、インターネットの「プロバイダ」はそのような情報をもっていて提供できるのかどうか、という観点だと思います。

したがって、使い方を間違えれば、誰が何を発言したのかを権力が知り得ることになり、それをもとに取り締まれるのではないかという危惧だと思います。

高市大臣は、3つの観点から、それを否定しています。

第1に、総務省で検討している内容は、決して「表現の自由」を侵害するものではないという点です。「公共の福祉」による制限はあるものの、「表現の自由」は、日本国憲法第21条で手厚く保障されていると主張されています。

第2に、「政権批判を封殺する法規制」はできないと。内閣や国会に対する意見表明も、日本国憲法第21条の基本的人権である「表現の自由」として保障されており『プロバイダ責任制限法』でも認められていないとしています。

第3に、総務省は、「木村花さんの件に便乗」して検討を始めたわけではなく、昨年5月に、サイバーセキュリティ対策本部で検討に着手しているものだ、ということです。

この「プロバイダ責任制限法」は、実は、行政書士の試験の範囲になっておりまして、受験勉強当時は、しっかり読み込んだつもりですが、上記のような「表現の自由」との関係で、難しい内容でした。

今回、見直しが行われるとしたら、以下の4点があげられています。

①IPアドレスが保存されていないケースなど、発信者を特定することが困難な場面が増加していること。

②権利侵害が明白な場合であっても、プロバイダが、発信者情報を裁判外で開示しないケースが多いこと。

③発信者特定の為の裁判手続に時間がかかり過ぎて、被害者の負担が大きいこと。

(現在は、「IPアドレス・タイムスタンプの開示」「氏名・住所の開示」という2段階の裁判手続が必要)

④海外への訴状の送達手続に時間がかかること。プロバイダが海外のケースです。

このところ、「ステイ・ホーム」を守る生活に伴い、当たり前のようにインターネットを使うことが定着してきていますので、気になるところです。

専門家の間でしっかり議論していただきたいと思います。

(写真は、 kenstockさんによる「写真AC」からいただきました)