コロナに負けない;人工呼吸器の生産増強のための手続き

東京都が顕著ですが、新型コロナウィルスの感染者は増加にまだ歯止めがかかるまでに至っておりません。入院を要する重症の患者には人工呼吸器が必要になりますが、感染者が10万人を超えている米国では、この装置が不足しつつあり、トランプ大統領が増産を指示したことが報道されています。
「非常時に軍事物資を増産させることができる『国防生産法』を発動。3月22日には米食品医薬品局(FDA)が人工呼吸器の製造に関する一部規制を緩和し、素材や部品の変更を容易にした。異業種の早期参入が可能になり、ゼネラル・モーターズ(GM)は専用ラインを設け6月までに製品を出荷する計画だ」ということです。
では、この人工呼吸器は、我が国に何台あるのか、「日本呼吸療法医学会」と「日本臨床工学技士会」が2月に緊急調査を行っています。
https://www.ja-ces.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/d17eb111750dd2702c626ae3fb46f21c.pdf
そのデータをみると、回答に応じた医療施設の集計ですから、全国津々浦々の集計結果ではないことをお断りしておきますが、総病床数27万床に対して、人工呼吸器は2万2千台となっています。そのうち、東京都は3千台。埼玉県、千葉県はそれぞれ1千2百台、神奈川県は7百台となっています。平常時ならば十分なのでしょうが、ずいぶん、余裕がないように思えます。
緊急事態宣言が出され、国民が外出自粛をしていても、宣言発令前に感染して潜伏期になっている人がいるものと思いますが、毎日、新規感染者が百名を超える、東京都の増加の傾向は「感染爆発」が始まっているとみるべきなのか、ある程度、抑制されている結果が現われているのか、米国のように人工呼吸器の台数が足りなくなるという事態に至らないことを願っています。

気になるのは、4月10日付の日経新聞の記事です。
「新型コロナウイルスの感染拡大で人工呼吸器の需要が高まるなか、日本では異業種の参入が進まない。今の医療機器規制の下では新規事業者の製品認可に10カ月以上かかり、リスクも読みにくいためだ。」

「緊急度が増しているのに各社が足踏みするのは、これまで機器の徹底した安全に主眼を置いてきた厳格な規制にある。国内で医療機器を製造・販売するには医薬品医療機器法(薬機法)に基づく審査がいる。特に人工呼吸器は人の命にかかわるため、最低6カ月以上の審査期間が必要となる。新規参入の場合、製造許可、工場の設計など審査項目も多く、10カ月以上かかるという。」

確かに、患者の命に係わる重要な機器なので、製品の安全性に関する規格や認証は重要な手続きですが、上記のとおり、米国では「米食品医薬品局(FDA)が人工呼吸器の製造に関する一部規制を緩和し」というようなことを臨機応変に行っているようなことをぜひ、参考に、行政手続きの緩和に向かわないか、ご検討をお願いしたいものです。手遅れにならないために。
(写真はHiCさんによる「写真AC」からいただきました)