コロナに負けない;様々な手続きの電子化が進むことに期待したい

新型コロナウィルスの感染拡大が進めば、欧米など諸外国で起きているように医療施設に患者が多数押し寄せ、ベッドや酸素吸入器が足りないというような物理的な問題以上に、診療に当たる医師や看護師が圧倒的に不足する事態が迫っています。

それを防止する観点から、厚生労働省は来週から「オンライン初診」を始めることにしたと報道されています。新型コロナではない一般の患者と、軽症あるいは無症状の新型コロナウィルスの感染者が対象です。
スマートフォンを使ったオンラインや電話での遠隔診療で、処方箋もネットを通じて受け取れるという制度です。料金に関しても、現行の初診料の診療報酬が2880円であるのに対して、2140円とする、すなわち、患者負担は3/4で済みます。
報道では、「新型コロナウィルスの感染拡大が収束するまでの時限措置」となっていますが、これを機会に、このような制度が定着、拡大することを願っています。

病院に行けば、決まった症状の薬を処方してもらう目的だけのために、医師の診断と処方箋を書いてもらうために通う大勢の高齢者の方が必ずおられます。
今は、新型コロナウィルスの対応で医療機関も満杯になるだろうから、という配慮ですが、平常なときにも、電子化、オンライン化をこの方面にも拡大すべきではないかと思います。

話は、少しずれますが、感染拡大防止の観点から「三密」を避け、他人との接触の機会を7割から8割削減する目的で、休業要請の指定を受けていない会社でも、在宅勤務や自宅待機が拡大しています。
急に起きた事態ですので、準備がうまくできていない会社は、とりあえず、在宅の社員にパソコンを持ち帰らせ、会社と定期的な連絡を取らせる、というような措置でしのいでいるようです。テレビのニュースでは、そんななかでも出勤しているサラリーマンにインタビューすると、「書類に印鑑が必要でどうしても会社に出勤しなければならない」などの事情を抱えている人が取り上げられます。そうでない、自宅にパソコンがあっても、何をやったらいいのか不安なので、とりあえず出勤時間を少しだけずれして会社に行くという、インタビューに乗らない会社員も多数存在するのではないかと思われます。
在宅勤務では「不便ながらしかたなくITツールを使う」ということから始まるのかと思いますが、この事態をその会社のビジネススタイルを変革する機会と前向きにとらえて対策を練る、という会社は、今後も、危機の状況に限らず、平常時にも躍進する会社になるのではないかという気がします。

既存の道具立てを使って、ネット会議などはできます。しかし、日頃、会議室にとりあえず集まって、あるいは朝礼で、上司の指示をまって、その日の仕事の内容を確認する、というようなやり方がパターン化している会社は、まだ、マシな方で、始業時にネット会議を1回やれば、散らばっていても問題なく、各自の果たすべき仕事が明確になります。
そうではない会社が実は多いのではないかという気がします。仕事ができる人は必ずしも管理職で指揮命令系統の上司ではなく、そのキーマンが不定期に発する指示で抜けやモレがなく、なんとなく仕事が進んでいく会社がその典型です。
コンビニやファミリーレストランのように、すべての業務をマニュアル化するのは難しいのかもしれませんが、パソコンのツールだけが与えられても、その道具立てに乗せることができない、社内外の人間同士の日頃の仕事の指示や受け渡しを定式化できるように改良していく、今回の事態はそのような機会ととらえることができるはずです。

話を冒頭の医療のオンライン化に戻しますが、制度が動き出すと、当初予期していなかった、いくつかのトラブルが出てくるかもしれません。対面診療では絶対に起こりえなかったことが遠隔診療では見過ごされてしまう、というような。そういう局面になったときに、今回は新型コロナウィルス感染拡大防止ということで強いられてはじまった制度なので、これが収束したら、すみやかに元に戻る、という思考方法ではなく、何か、重大な確認事項が「対面ならできたが遠隔ではできなかった」ところに隠されていたということを分析しておけば、過疎化や少子高齢化が進む社会に役立つ仕組みに応用できるような気がします。

「新型コロナウィルス感染拡大防止」というモードは、ごくごく短期間のガマンではなく、数か月なり、けっこう長期間になることも考慮して、「臨時の措置」と扱わないことが賢明ではないかと考えます。医療制度も、一般の会社組織もです。要は前向きに。

(写真は、 FineGraphicsさんによる「写真AC」からいただきました)