増え続ける「空き家」について

先日、「空き家問題」の勉強会に出席してきました。聞きかじりの内容も多いのですが、この問題について触れたいと思います。
令和元年9月に発行された総務省の「住宅・土地統計調査」のなかで、「空き家問題」がとりあげられています。
「居住世帯のない住宅のうち,空き家は 848 万9千戸と,2013 年と比べ,29 万3千戸(3.6%)増となっている。また,総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は 13.6%と,2013 年から 0.1 ポイント上昇し,過去最高となっている。」とされています。空き家の内訳をみると,「賃貸用の住宅」が 432 万7千戸,「売却用の住宅」が 29 万3千戸,別荘などの「二次的住宅」が 38万1千戸,「その他の住宅」が 348 万7千戸となっています。
ここで、2番目に多い「その他の住宅」とは、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅のほか,空き家の区分の判断が困難な住宅などが含まれています。これが「空き家」が増え続けている主な要因になっています。
例えば、相続の際に、複数の法定相続人がいて分割が難しく紛争に至り、それが長引き、結局は長期間放置されてしまうケースがあります。単独では売却する、あるいは、取り壊すなどの意思決定ができない複雑な権利関係があるような場合です。
一方で、人口減少に伴い、世帯数もこれから減少に向かうのに、日本人の習性として、新築志向があり、築年数の旧い住宅はどんどん放置される傾向にあるということも要因の一つです。英国あたりでは築100年以上の家に住むことは誇りととらえられています。石やレンガでできた家と、木と紙でできた家の相違からくる文化の違いもあります。欧米では中古住宅の流通量が売買される住宅の7割~9割を占めるのに対して、日本の場合、15%程度というデータもあります。国の税制も新築住宅に関する減税など、空き家が増え続けているのに、新築を奨励するかのような制度が続いていることも、政策がよろしくない以前に、求める側も住宅を供給する側も、「住むなら新築」という考えが前提にあるように思います。
「空き家情報提供サイト」の記載によれば、「国土交通省の平成21年度空家実態調査によると、空き家の9割近くは80年代以前に建築されたものであり、特に団地タイプの集合住宅が大量供給された70~80年代築の空き家は全体の半数近くを占めます。また、平成26年度空家実態調査では、戸建空き家のうち人が住まなくなってから5年以上経過している住宅は過半数を占め、昭和55年(旧耐震基準)以前に建築された戸建空き家は全体の約7割に上ります。腐朽や破損がある空き家もこうした古い住宅に集中しており、空き家の中でも改修等により市場での流通が可能な住宅と、利活用が困難な状態にある住宅が混在していることがわかります。」とされています。
・団地タイプの集合住宅が大量供給された70~80年代築の空き家;全体の半数
・戸建空き家のうち昭和55年(旧耐震基準)以前に建築されたもの;約7割
「利活用」を考える前に、利活用困難な状態のものが相当数あるのに、所有者不明になっていることもやっかいな問題です。

行政書士ができることはなにか、という視点で、もう少し、この「空き家問題」を掘り下げていきたいと思います。

(図は、令和元年9月30日 総務省の「住宅・土地統計調査」から)