外国人材の採用拡大;国土交通省関係の「航空分野」

将来にわたる人材不足を補うために、各産業分野で外国人技能者の受入れを拡大する施策が行われています。昨年から「特定技能1号」の募集が始まり、厚生労働省が扱う「介護」の分野が先行しているようです。この介護の分野では、単に、外国人を技能者として採用するだけではなく、受入れ後の育成が計画どおりに行われているかをフォローする目的で、「外国人介護人材相談支援事業」というものも展開されています。

同様に、多くの外国人材の採用を予定している国土交通省はどうなっているでしょうか。最近、採用の仕組みが整った「航空分野」をみてみます。
ここに、対象とする外国人受け入れの作業内容や採用目標人数の概要が示されています。
https://www.mlit.go.jp/common/001273890.pdf

「航空分野(空港グランドハンドリング及び航空機整備)は、近年の訪日外国人旅行者数の増加に伴い、人手不足が深刻化」
「今後、訪日外国人旅行者数の政府目標(2020年4,000万人、2030年6,000万人)に向けた国際線旅客のさらなる増加等から、人員不足がボトルネックとなることが懸念」
「そのため、生産性向上の取組や国内人材の確保を最大限行っても、なお発生する人手不足に対して、制度開始から5年後までの累計で2,200人を上限に外国人材を受入れ」

とされています。

<空港グランドハンドリング業務>
・航空機の駐機場への誘導や移動
・手荷物・貨物の仕分け、ULDへの積付、取り降し・解体
・手荷物・貨物の航空機への移送、搭降載
・客室内清掃、遺失物等の検索、機用品補充や機体の洗浄
<航空機整備業務>
・空港に到着した航空機に対して、次のフライトまでの間に行う整備
・通常1~1年半毎に実施する、約1~2週間にわたり機体の隅々まで行う整備
・航空機から取り下ろされた脚部や動翼、 飛行・操縦に用いられる計器類等及びエンジンの整備

要するに、「外国人旅行者が増える」といっても、それは、単純に数が増えること、離発着する飛行機が増えることに伴い、それに付随する作業も増えるということで、その業務を扱う外国人を採用するというものです。
したがって、資格要件のなかに、語学や外国人との接客に関する条件は出てきません。
日本語能力のほかには、「航空分野技能評価試験(空港グランドハンドリング 又は 航空機整備)」が課せられるだけです。
関心があるのは、外国人の採用と、採用されたあとのフォローですが、ホームページには、「航空分野特定技能協議会(事務局:国土交通省航空局)を設置しました。航空分野の特定技能所属機関及び航空分野における特定技能所属機関が雇用する特定技能外国人に係る1号特定技能外国人支援計画の全部の実施の委託を受ける登録支援機関は、当該協議会に加入することが必要です。」と書かれています。
厚生労働省は「外国人介護人材相談支援事業」という枠組みで適正化を図ろうとしているのに対して、国土交通省は事務局を国土交通省に置いた「協議会」に加入することを義務づけた「登録支援機関」を通じてフォローを行わせることによって適正化を図ろうという方針と理解しました。目標とする人数は多いものの、少人数の事業者が広く外国人を採用するであろう「介護」分野とは異なり、業務内容を限定することによって、該当する事業者(たぶん、大手の事業者になるものと思われます)を絞り、それを官庁主導でしっかり運営させていく、という業界の違いによるもののようです。

引き続き、このような業界の違いにも着目していきたいと思います。

(写真は、 matisseさんによる写真ACからいただきました)