米国の「移民」の事例;産業にとってプラスの面

人材不足から我が国でも積極的に外国人材を受け入れる制度が始まっています。「特定技能」の制度がそれに相当します。14の業種で技能系の外国人を5年間で34万人採用する計画になっています。

これをとらえて「移民政策が始まった」と報道している新聞もありました。元祖ともいうべき移民の国、米国の事例を少しみてみます。
たしかに、労働集約型と称される、いわば、単純労働、より正確には、第1次産業の農業や漁業など、あるいは、第3次産業のサービス業や流通業に多くの移民の人が就いています。正規の就労ビザを取得した人以外に、不法就労の人もかなりの割合でこの分野に携わり、ある面、米国の経済を支えているようです。

こういった部分が強調されがちですが、意外なデータをみつけました。それは、「創業」に関するものです。よく知られた、外国人による創業のケースでは、Intel(Andrew Grove/ハンガリー)、Sun Micro Systems(Vinod Khosla/インド)、Yahoo(Jerry Yang/台湾)、Google(Sergey Brin/ロシア)といった米国を代表する大手企業の設立者にも外国出身者が多数存在しているということです。
そもそも、米国は日本より格段にベンチャー企業などが育ちやすい環境にあることはよく知られています。上記のIT系企業の成功事例をみると、教育を受けた高度人材による成果ととらえがちですが、ここに二つのデータがあります。一つ目は、外国人による創業の比率がネイティブの米国人に比べて2倍も高いということです。これは、まあそうなのか、外国人は異国で一旗あげようとして努力するから、そういうこともあるのかと納得がいきます。
二つ目のデータは少し驚きです。「学歴別創業比率」です。ダントツに高い線は、大学卒ではなく、高校卒業以下の人の創業比率を示しています。米国は移民の歴史が長いことに加え、雇用関係が流動的で、もちろん「終身雇用」のような制度はありませんから、気の利いた人は独自の才能を伸ばせるチャンスが多数存在するということなのかと思います。

「先進国」で起こっていることは数年遅れで日本でも再現される傾向にあります。やってきた外国人が、これまでと異なるセンスで日本で新ビジネスを立ち上げるというようなことはサプライズではないのかもしれません。このようなことも含めて、「外国人材の活躍の機会」ということに想像を巡らせておくべきかと思いました。つい、我々、日本人は「上から目線」でものごとをとらえがちではないかと。

(今回の文章は、みずほ銀行 産業調査部「米国における外国人材活用の経済的効果について」を参考にさせていただきました)