就労ビザ;米国の事例を参考

労働力不足を補うために、新たな外国人材の受入れとして、昨年(2019年)から「特定技能」の制度開始されました。まず、介護などの分野での採用がはじまっています。人材不足の14の業種に、5年間で、34万人を見込んでいます。

我が国の場合、「技術・人文知識・国際業務」などの少数の高度人材を受け入れる制度は以前からありますが、大量の外国人技能労働者は、「技能実習」の形でしか認められておりませんでした。令和元年をスタートとして、大きく、外国人労働者の状況が変わっていくものと思われます。

ところで、そのような「外国人材」の受入れの経験豊富な外国の場合の「就労ビザ」はどうなっているのか、調べてみました。
少し前のオバマ政権の頃の文献ですが、以下を参考にしました。
「米国における外国人材活用の経済的効果について」みすほ銀行 産業調査部
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1045_01_03.pdf

一言で示せば、「米国では割当制と労働市場テストにより自国の経済成長に必要な外国人材を機動的に受入れている」となっています。「割当制」というのは言葉からイメージがわきますが、「労働市場テスト」とはどういうものなのかも含め、以下の内容です。

1)米国は外国人受入れに係る基本的な枠組みとして「数量割当制」を採用しており、政府がビザの発給上限を設けることで年間の受入人数をコントロールしている。
①就労目的のビザのうち主だったものとしては、高度人材を対象とした永住権付きの「雇用関係移民ビザ」(年間上限 14 万人)
②IT 人材等の専門性の高い職業への従事を対象とする「短期就労ビザ(H-1B)」(年間上限 6.5万人)
③短期季節農業、短期非農業(主にサービス業)における一時的な労働力不足の穴埋めを目的とする「短期就労ビザ(H-2A、H-2B)」等

2)国内人材への事前の就労募集は「労働市場テスト」と呼ばれる制度であり、就労機会の競合を避ける目的でシンガポールやドイツをはじめとする欧州諸国でも広く導入されている。

また、「就労関連ビザを保有する外国人材の雇用は、原則として当該業務の担い手となる国内人材が不足していることが前提とされている。実務的には①国内人材への事前の就労募集、②産業別の平均以上の賃金設定、③国内労働者と同様の労働条件といった要件を満たし、労働省から雇用の認可を得ることが雇用者サイドに求められる。」
このあたりは、今回、我が国に導入された「特定技能」の制度と類似のもの(あるいは、お手本)と思われます。

以上、就労目的の外国人雇用が整然と行われているようですが、
「不足する労働力を確保する上で、実態的に重要な役割を果たしているのは、約 1,200 万人と推計されている不法移民の存在であると考えられる。米国の不法移民はメキシコ等中南米から陸続きに入国する者や正規のビザ失効後に違法滞在する者が大半であるが、その多くは米国内に定住し、定職を持つとみられ、こうした不法移民が結果的に労働集約型産業で不足する労働力の補完に貢献している可能性が高い。」
こういうことが背景となり、トランプ政権の移民対策につながっていきます。

我が国に視点を戻すと、「国内労働者と同様の労働条件」ということを前提とした「特定技能」の在留資格が徐々に増えていくことが期待されますが、「技能実習」の制度も継続されます。条件が厳しく、逃走する人も後を絶たないことが報道されていますが、米国の事例のように、「主な働き手は不法移民で成り立っている」ということにならないよう、尽力していきたいと思います。