入管と不服審査の関係(その5)

入管の関係の法務省「在留特別許可に係るガイドライン」に示される「こういう条件ならば認められませんよ」という「消極要素」をみてみましょう。「例」も挙げられており、理解しやすくなっています。

1.特に考慮する消極要素 (1)重大犯罪等により刑に処せられたことがあること <例> ・ 凶悪・重大犯罪により実刑に処せられたことがあること ・ 違法薬物及びけん銃等,いわゆる社会悪物品の密輸入・売買により刑に処せられたことがあること (2)出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること <例> ・ 不法就労助長罪,集団密航に係る罪,旅券等の不正受交付等の罪などにより刑に処せられたことがあること ・ 不法・偽装滞在の助長に関する罪により刑に処せられたことがあること ・ 自ら売春を行い,あるいは他人に売春を行わせる等,本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行ったことがあること ・ 人身取引等,人権を著しく侵害する行為を行ったことがあること

2 その他の消極要素 (1)船舶による密航,若しくは偽造旅券等又は在留資格を偽装して不正に入国したこと (2)過去に退去強制手続を受けたことがあること (3)その他の刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められること (4)その他在留状況に問題があること <例> ・ 犯罪組織の構成員であること

ここに挙げられている内容は、たしかにこういう方は、日本に在留してもらっては困るという事例のように思えますが、法務省はご丁寧に、注釈をつけています。

・在留特別許可の許否判断  在留特別許可の許否判断は,上記の積極要素及び消極要素として掲げている各事項について,それぞれ個別に評価し,考慮すべき程度を勘案した上,積極要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素として考慮すべき事情を上回る場合には,在留特別許可の方向で検討することとなる。したがって,単に,積極要素が一つ存在するからといって在留特別許可の方向で検討されるというものではなく,また,逆に,消極要素が一つ存在するから一切在留特別許可が検討されないというものでもない。 主な例は次のとおり。

ここでも、積極・消極要素のほか「在留許可」が下される事例と、「退去方向」となる事例が具体的に示されています。

<「在留特別許可方向」で検討する例> ・ 当該外国人が,日本人又は特別永住者の子で,他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること ・ 当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻し,他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること ・ 当該外国人が,本邦に長期間在住していて,退去強制事由に該当する旨を地方入国管理官署に自ら申告し,かつ,他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること ・ 当該外国人が,本邦で出生し10年以上にわたって本邦に在住している小中学校に在学している実子を同居した上で監護及び養育していて,不法残留である旨を地方入国管理官署に自ら申告し,かつ当該外国人親子が他の法令違反がないなどの在留の状況に特段の問題がないと認められること

<「退去方向」で検討する例> ・ 当該外国人が,本邦で20年以上在住し定着性が認められるものの,不法就労助長罪,集団密航に係る罪,旅券等の不正受交付等の罪等で刑に処せられるなど,出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること ・ 当該外国人が,日本人と婚姻しているものの,他人に売春を行わせる等,本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行っていること

「退去方向」はあえて事例も要らないようにも思えます。 一方、「在留許可」のほうは、「不法残留である旨を地方入国管理官署に自ら申告し,かつ当該外国人親子が他の法令違反がないなどの在留の状況に特段の問題がないと認められること」のように、「不法残留を自ら申告する」=「誠意をみせる」などの審査官の心象を良くすることが効果があるともとれる、裁量の幅があることが伺えます。このあたりが、「ベテラン行政書士」が活躍できる背景だと思われます。

それならば、ストレートに、「在留特別許可」の申請をしたくなるところですが、手続き上、段階を踏まなければならないところが複雑なところです。次回、そのあたりの手続き上の課題と思えるところに踏み込みたいと思います。