入管と不服審査の関係(中間まとめ)

これまで、5回にわけて、「入管」における「不服審査」の関係を解説してきました。

いったん整理しますと、

1.「外国人の出入国又は帰化に関する処分」は、「行政不服審査法」の適用除外とされている。 2.ただし、「入管法」が対象としている手続きの、①上陸手続,②在留資格変更・在留資格取消し手続,③退去強制手続,④ 難民申請手続うち、「④ 難民申請手続」には、行政不服審査法が適用される。 3.そのほかの、①から③の手続きには、「行政不服審査法」が適用されないが、その背景には、「出入国管理は管理当局の裁量の余地が大きい」ということがあるのと、「すでに入管法のなかに相応の仕組みがある」という側面がある。 4.たとえば「①上陸手続き」に関しては、  ⅰ上陸審査(入国審査官)⇒ⅱ口頭審理(特別審理官)⇒ⅲ異議の申出(法務大臣)という手続きが用意されている。  「③退去強制手続き」に関しても、  ⅰ違反調査(入国警備官)⇒ⅱ違反審査(入国審査官)⇒ⅲ口頭審理(特別審理官)⇒ⅳ異議の申出(法務大臣) という手続きが用意されており、三段階目で「在留要件に該当しない」と判断したケースでも、「法務大臣に異議を申し出る」ことによって、「在留特別許可」を受ける余地がある。 5.しかも、法務大臣の裁量の余地が大きいとはいえ、「こういう条件の場合、受け入れますよ」という「積極要素」と、反対に「こういう条件ならば認められませんよ」という「消極要素」が具体的な事例によって示されている。

ということまでみてきました。たいへん、制度が完備されているように見えます。 しかし、問題は、何段階も救いの網が用意されているように見えながら、 ⇒本人も退去強制事由に該当する ことは認めるが,個人的事情により在留を希望している場合、最終的な目標である「在留特別許可」を得るために、その前段の  ・口頭審理 ⇒ ・異議の申出 という手続きを経なければならないという点が挙げられます。  すなわち、口頭審理「NO」⇒異議の申出「NO」という手続きをへて、(それは申請する側も「NO」の回答になることを承知の上で)、本音は、その次のステップの  ・法務大臣の「在留特別許可」 を得ることが目的で、そこまで、無駄とも思える手続きを経なければならないという、道筋の長さが問題のように思えます。

「行政不服審査法」の適用除外の背景が「すでに入管法のなかに相応の仕組みがある」ということでしたが、「行政不服審査法」には、 ①簡易迅 速な救済が実現できること ②処分の違法性のみならず, 処分の当・不当の問題まで審査できること ③行政の側から見ると,自己の処 分を見直す機会が与えられること ④不服申立の段階で紛争を解 決することによって裁判所の負担軽減に資すること こういうメリットが期待されていましたが、このうち、①、③は果たされていないように思えます。

次回は、手続きの「数」の面で、不合理と思えるところをみていきたいと思います。