デジタル遺言~遺言書すら不要になる行政の仕組みを夢想してみました
民法を改正し、自筆による遺言の作成方法を簡素にするとか、その自筆の遺言書を法務局が預かってくれる制度を令和2年7月10日からスタートさせるということを行政が積極的に進める背景には、戦前の旧民法のように「相続は「家」の問題であり家督を継ぐ長男の役割」というのと異なり、戦後の民法では、子供が複数の場合、平等の権利が与えられるようになり、それが原因で、相続をめぐって裁判沙汰になり、また、それが長期に及び、さらには、放置される不動産が増えている実態をなんとかしなければ、という現実が関係しているものと思います。
さて、令和2年7月10日から、その自筆の遺言書を法務局が預かってくれる制度の場合、
法務局では原本を保管すると同時に、預けたその遺言書をスキャナーで写し取り、「画像データ化」します。遺言者は後ほど、タブレット端末などで何度でも見ることができます。これが、遺言のデジタル化の第一歩です。
さらに、進化し続けるIT技術を駆使すれば、本人が作成したものであることを担保するための、民法968条「自筆証書によって遺言するには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さねばならない」というルール自体を変更できるのではないか、「虹彩認証」のような生体認証と作成された文書を結び付けることができれば、「全文自筆」こだわる必要がなくなるのではないかと思われます。たとえば、財産目録のエクセル表に誰に相続させたいかという記号がつけられたものをもって「遺言」とできるのではないかと考えてきました。
ここまでのことができると、「デジタル遺言が1枚のエクセル表になる」というだけにとどまりません。
我が国では、遺言作成の比率が低いために、なんとか簡便な方法にして普及させていきたいということですが、自発性に頼っていては限界があるのではないかと思われます。
不動産を取得する際に、あるいは、銀行口座を作る際に、自動車などの高価なものを購入する際に、自分自身に万一のことがあれば、それを誰に相続させたいかが記録できれば、遺言や相続の際に書き残すべき内容は事足ります。
行政のデジタル化が進めば、例えば自動車購入の際にタブレット画面の「選択メニュー」に、相続人の候補者を表示させることは容易になるのではないかと思う次第です。
そうなると、大物の資産は、本人がしっかりしているときにチェックを入れて、行先があらかじめ紐づけられます。もちろん、本人のチェックは、その本人が確かに行ったことが「IT手法によって」関係付けられていることが前提ですので、気が変われば、相続人変更のチェックを入れなおすことも容易にできるものと思われます。
高齢化が進んで認知症になるケースがあるとしても、不動産を取得した時点、あるいは、銀行の口座を開設した時点や自動車などの高価なものを購入する時点では本人は認知症になっていません。その時点で、強制的に「チェックを入れる」ことを義務付けると、世の中がずいぶん変わるのではないかと思われます。面倒な「登記」という手続きも、すいぶん簡素化されるのではないかと思いますし、遺言・相続が専門だという「士業」の仕事が一掃されるのではないかと夢想しています。
うっかり、見落としているのは、「タンス貯金」の存在でした!
法手続きを変更する際には、いろいろな角度から検討が必要だという教訓にしたいと思います。
さて、令和元年がスタートした5月1日に行政書士事務所の開業届を提出し、同時に間に合わせでホームページを立ち上げました。
「新人」という甘えは許されず、お客様からのご依頼に、即、対応すべく、日々勉強しております。そうして得た内容に関連して、このブログに思いつくことを書かせていただいてきました。この姿勢を維持することによって、行政書士白川という人物をご理解いただくことが、皆様のご安心につながるものだと信じております。
また、12月に入ってから、講師の海口平太郎先生のご指導、デザイナーの遠藤由佳さんのご協力により、事務所開設以来の念願だったホームページのリニューアルとfacebookとの連動ができました。おかげ様で、この事務所のサイトを承認していただいた方は90名を超え、100名に迫っております。従来のfacebookのお友達には唐突なご連絡だったかと思います。遺言・相続や入管、会社設立や事業継承などの手続きのニーズを感じておられない方も多いかと思いますが、なにか、そういった行政手続きの関係でお悩みが発生しましたら、ご遠慮なくご相談ください。
ご愛読に感謝いたします。
年内は本日付けを持ってお休みとし、年明けは、1月4日から再開する予定でおります。なお、年末年始に日頃離れて生活されているご家族とともに過ごされる方も多いものと思います。ブログはお休みしますが、行政手続き上のお悩みのメールなどは、年中無休で受け付けており、迅速に対応いたします。
どうぞ、皆様、良いお年をお迎えください。