行政不服審査の手続きを実際に行うかどうか

さて、行政書士の資格から、一つランクアップして「特定行政書士」になりました。

この資格によって、行政庁の許認可等に関する「不服申立て手続」を扱うことができることになります。申請者側の書類の不備ではなく、受付の行政庁のご担当が該当する法制度の細部までの理解が不十分であったり、あるいは条文の解釈に相違があるようなケースで、これは譲れない、という局面かと思います。さらには、今、ここをはっきりさせておかないと、あとで同じような場面に出くわす申請者に対して救済の道を切り開くための突破口にする、ということなのかもしれませn。

しかし、冷静にとらえると、現実に依頼者がそこまで要求するかどうか。ただでさえ、一般に審査に時間を要するというのが相場の行政手続きです。処理時間の短縮を図ることや標準処理時間を設けて対応するようにしているという昨今の行政庁側の改革もあるとは思いますが、不服審査のための審査請求を行った場合、最低でも月単位の時間がかかるものと思います。新聞記事になるような大きな社会性のある案件は、そのような手続きを踏んでも、正すべきは質すとすべきなのかもしれません。一方、行政庁の下した決定に多少の不満があって窓口に食い下がるようなことがあっても、正規の手続きを踏んで、「不服申立て手続」を起こしてください!と言ってくる依頼者は、そんなにいないのではないかと考えています。

では、なんのために、この資格をとったのかといえば、それなりに勉強にはなりましいた。18時間の講義の内訳は、次のようになっています。

①行政法総論         1時間 ②行政法総論         1時間 ③行政手続制度概説 1時間 ④行政手続法の論点 2時間 ⑤行政不服審査制度概説 2時間 ⑥行政不服審査法の論点 2時間 ⑦行政事件訴訟法の論点 2時間 ⑧要件事実・事実認定論 4時間 ⑨特定行政書士の倫理 2時間 ⑩総まとめ         2時間

①から⑦は、行政書士になるための試験科目にあるので一応はさらっと勉強するものですが、かなり詳しい内容に踏み込んでいます。加えて、「⑧要件事実・事実認定論」が新しい科目です。

実体法規が規定する要件のうちどの部分を主張/証明すればいいのか、例えば,「貸したお金を返せ」という訴えについて,何を主張し証明すればいいのか(貸した金額だけでなく,弁済期が到達したことやまだ弁済されていないことまで主張/証明しなければ ならないのか。)という訴訟を起こす際には必須の知識を勉強します。

実際に訴訟は行わないまでも、こういう観点で、法制度が求めている「申請書に添付することが必要な書類」に関しても、行政庁側は何を立証しなさいと言ってきているのか、という観点での機転がきくようになります。

得られたものはそれだけですが、名刺に新たな肩書を記載し、ひとつひとつ勉強を積んでいることを示すことに多少の意義を感じてもらえたらと思います。