成年後見制度はなぜ機能していないのか;外国人の場合はどうなっているのか
なぜ機能していないのか、という問いかけに直接対応するものではないのですが、外国人の場合は恩恵を受けられるものかどうか見ていきましょう。
ここでまず扱うのは、日本人に永住権のある在日外国人が高齢化して認知症などの心配がでてきた場合に、日本の成年後見制度を利用できるか、という問題です。
割と簡単な「任意後見」のほうから。 任意後見の制度はあくまで「契約」です。それに基づいて、日本人だろうが外国人だろうが、契約に基づいて対処すればいいわけです。この制度に乗ったとすれば、その契約を「日本の公証人役場で、日本の手続きに則って」締結できるのか、ということに関しては、答えは「できます」。その場合、注意が必要な点は、対象の方は外国人であっても、契約の準拠する法律として「日本の法律を選んだ」という点ですね。 元々の外国での生活と比較した場合、成年後見の制度や契約に関して、日本の法律を選んだということに伴って、どういう利益・不利益があるのか、比較すること自体、意味のないことだと割り切れば、日本に在住していて日本の法律の下で、日本人と同じような対応を受けることになるものと思われます。
少々、やっかいなのは、「法定後見」のケースだと思います。 後見開始の申立権者、審判などは日本法によることになります。 申立者は通常、配偶者や親族になりますが、ここは必ずしも日本法によらない、という点に注意が必要です。日本法に基づき日本で婚姻した場合は理解しやすいですが、外国人の本国の法律に基づけば配偶者となる有効な婚姻であれば、配偶者として申立権者であるということになるようです。たとえば、同性婚が本国で認められているのであれば、同性の配偶者が申立を行うことができるということになります。
そのような、日本の裁判所が判断できるのかの問題に関して「法の適用に関する通則法」(通称:通則法)というものがあるので、それによって判断することになりますが、本来、そう難しいものではありません。 日本の法律を適用して後見開始の審判等ができますし、後見開始の原因、申立権者、審判の効力も日本法によって行われます。したがって、市町村長にも申立権が認められることになります。
今後、技能実習から特定技能1号を経て特定技能2号に進み、定住する外国人が飛躍的に増加するのであれば、このあたりも、当該の外国人に対してだけではなく、その方が所属する会社や地域の方々にも、分かりやすく理解を広める必要があるものと思われます。