吉野先生、ノーベル化学賞受賞おめでとうございます!
リチウムイオン電池を開発した功績という、たいへん分かり易い技術についての受賞です。これで日本人のノーベル賞受賞者は27人目ということで、たいへんおめでたいことだと思います。
私は、リチウムイオン電池を開発したのは、ソニーだと思っておりました。どんどん小型化する携帯電話やビデオカメラに搭載する電池が進化し続けているときにそれらを購入し、その都度、前の製品よりも小型化する経緯を体験してきました。
その元になる電極の組み合わせは旭化成の吉野さんの功績ということのようで、スウェーデン王立科学アカデミーは細かいところをよく調べていることに感心しています。
電池の製品化はソニーからで、では、最初にこのリチウムイオン電池を開発した旭化成は製品の開発競争からは「負け組」なのかといえばそうではなく、そもそも、当初のリチウムイオン電池を世に出したときは、ソニーと旭化成は合弁会社を作っていたということですし、引き続き、正極と負極を仕切る絶縁体セパレータでは世界的なシェアを旭化成が持っていて、収益の柱になっているということを新聞報道で知りました。
現在、リチウムイオン電池はビデオカメラのような小型家電や人工衛星のような用途ばかりではなく、電気自動車や、太陽光や風力発電の変動する電気をいったん貯蔵する用途、すなわち、電気出力の平坦化のような大規模蓄電の用途にも活用されています。
過去は「軽薄短小」をとことん極めるという方向性の開発では、ソニーをはじめ日本のメーカーが得意とする分野でした。今回の開発もそのなかで生まれたものだと考えます。一方、技術が確立し、「汎用製品」となったものをより安く作るという分野では中国、韓国、台湾などが得意とするところで、日本製は分が悪いという印象を持っています。
これからについても、家電製品はほとんど日本では製造されていないように思います。それらの製品も日々改良の必要に迫られ、開発競争が行われているものと思いますが、そこには日本のメーカや技術者はいないのではないかということを危惧します。
そうはいっても、絶縁体セパレータのように、このメーカでしか作れない素材を持っている強みは継続することを知ることができたのは朗報です。
アカデミックな理論や技術をインダストリーの分野にうまく適用するフィールドの開発がノーベル化学賞の特徴のような気がします。戦後からバブル期までの「ものづくり」開発の競争の成果をもうしばらく味わうことができるように思えます。
その先はどうなのか気にしつつ、ともかく、ともに吉野先生の受賞をお祝いしたいと思います。