韓国に学ぶ必要あり;外国人労働者の問題

先日のYahooニュースにこういう記事がありました。 <『稼げる国』の一方で失踪者も――外国人労働者受け入れで先行する韓国の現実> https://news.yahoo.co.jp/feature/1423

記事によれば、韓国は1991年に日本の「技能実習制度」をモデルに「産業技術研修生制度」を導入し、単純労働分野の外国人の受け入れを始めました。しかし、日本以上に、人権侵害や悪質なブローカーによる中間搾取、不法滞在者の増加が問題となり、制度の見直しの必要に迫られ、2004年に単純労働分野の外国人を労働者として受け入れる『雇用許可制』(EPS)を導入しました。透明性が確保されているとして、国際労働機関(ILO)からも高く評価されているとのことです。

「雇用許可制」は、韓国政府が協定を結ぶ16カ国から、一定の枠内で外国人の非熟練労働者を受け入れる仕組みで、製造、建設、農畜産、漁業など5業種で、ここ最近は年間5万~6万人を受け入れています。 自国民の仕事が奪われないよう、まずは韓国人を対象に求人を出し、2週間経っても採用できない場合に限って、外国人が採用できる仕組み、最低賃金など韓国国民と同等の労働関係法が適用され、退職金や賞与もある、現在、この制度で約27万5千人の外国人が働いる、とニュースは伝えています。 同一の業務を行う場合の韓国人の給与と同等であることが義務付けられており、この点も我が国の「特定技能制度」と同様です。 さらに、「採用はすべて国と国の機関同士で行われるため、企業は海外まで行く必要はない。政府が提示した名簿から労働者を選ぶ。あっせん業者やブローカーが入り込むことはできず、ピンハネもなくなり、労働者の負担は軽くなった。」と報道されています。

しかし実態は? 「外国人が担当するのは、金属を溶かして鋳型に流し込む作業です。夜勤もあり、危険も伴う作業です。韓国人からの応募はないに等しく、仮にあったとしても、すぐに辞めていきます」-そういう背景もあり、 「韓国の不法滞在者の数は約35万5千人。査証免除や観光ビザで入国して違法に滞在するケースが多いと見られるが、雇用許可制で入国した外国人も、年間約9500人(2018年)が新しく不法滞在者になっている。」とたいへんな事態になっているようです。 この「雇用許可制」は「労働契約が単年ではなく、最長3年になり、雇用主の立場が強くなりました。転職には雇用主の許可が必要で、認められなければ、黙って働くか、失踪するしかありません。1年であれば劣悪な環境でも我慢して、転職に望みをつなぐことができましたが、3年となると難しい。3年後に雇用延長できるのも、元いた会社に限られるため、長く働きたい外国人は自分の意見を言いづらいのです」

結果、「失踪する外国人が後を絶たない」ということになってしまうようです。 記事によれば、暴力や暴言などのトラブルもある。トラブルを起こす企業の特徴は「社員が10人以下の個人商店のような会社です。農林や畜産など、労働法をきちんと守らないケースが多い。労働者が転職を願い出てもそれに応じず、そのため、失踪する外国人が後を絶たない」とのこと。

図式はこうなっています。 日本(1981年)「技能実習制度」⇒韓国(1991年)「産業技術研修制度」 韓国(2004年)「雇用許可制」 ⇒日本(2019年)「特定技能制度」

一定の要件が必要ですが、日本も単純労働に大量に外国人を受け入れる制度として「特定技能制度」を導入し、今年が初年度となります。毎年、1万人もの外国人労働者が職場から「失踪」しているという韓国の実情は、貴重な「先行事例」として、大いに学ぶ必要があるものと思います。