行政手続きの見える化とは

行政手続法では、「行政運営における公正の確保と透明性 (行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする 」という表現で、行政手続きの見える化がうたわれています。 また「デジタルファースト法案」具体的に、次のことが目標として示されています。

これは、これで進んでほしいと思いますが、「行政手続きの見える化」とは、どこまでのことをいうのか、ちょっと考えてみました。

また海外の事例ですが、エストニアでは、電子申請したあとの手続きの進捗のログが追跡できるというのです。推察ですが、申請を送信すると、ある時点で、その申請がどの部署で決裁待ちなのかがフォローできる、ということかと思います。ちょうど、アマゾンに注文すると、倉庫から出荷されたのか、運送業者のどの集配所まで行ったのか、配達がいつになるのか、ということがわかるように。

先日、銀行から融資を受けるための書類の一つとして、税務署から過去の納税証明書を取得するように言われて行ってきました。申請書自体は銀行の窓口に備え付けのものがあり、事前に必要事項を埋めていったので、あまり待つことなく証明書を発行してくれました。

その税務署の窓口で係りの方が、親切に、申請書と証明書の両方を示してくれて、「間違いありませんね」と確認を促してくれる一コマがありました。 ここで、申請書は銀行で指示されたとおりに埋めたものの、どこをどうチェックしたのか自分自身、よく理解できていなかったことに思いいたり、証明書は手元に残るものの、申請書は残らないので、スマホで写真をとろうとしました。 ところが、ここで、ご担当の方がエラく抵抗しました。みると申請書の下のほうに、申請内容に間違いがないことの確認だと思いますが、担当者のサインと、証明書を発行してよろしいという意思で上司の方と思われるサインが追加になっています。 それだけなのに、あとで担当者にクレームがいくことを恐れてなのか、いったん提出した申請書は税務署のものという厳格なルールがあるのか、かたくなでした。 申請者の側は個人IDもさらして身ぐるみ見せて対応するのに、行政庁のほうは、誰が担当者なのか、何をチェックするのか、といったことをオープンにしないというのは、どうなんだろうかと思った一幕でした。 特に押し問答をしたわけではありません。念のため。最近のスマホは性能が良いので、そうこうしている間に画像はいただきました。

「審査基準」や「標準処理期間」を開示することが行政手続きの見える化の第一歩であり、そのように各行政機関も教育されていることと思いますが、もう一歩、住民へのサービスを拡大するとしたら、エストニアの事例のように、どの部署がどういう観点で預かっているのか、ということが刻々と見えるようになることを期待したいと思います。デジタル化の狙いは、先にあげた「デジタルファースト法案」のように、簡単にクリックすれば書類が手に入る、というだけでは寂しいと思います。うまくいかない、滞るものに関しても、意思決定のルートを申請側のパソコンでたどれることを期待したいと思います。ダメになってからの「理由」を説明してもらうのでは、今の時代は遅いような気がします。 道具立ては問題なくそろっているので、やろうと思えば簡単なことです。 従来であればお役所のほうの意識改革が必要だったものが、ITツールに載せてしまえば、行政庁の職員一人一人が多大な「責任」を負うことなく、まずは、今、どこでどうなっているのか、ということが追跡できれば、たいへんありがたいという気がします。(ご担当の職員個人名を公開するのははばかられるのだとして)

ちなみに、なぜ、「税務署」は、「所」ではなく「署」なのか。「国税を納めるところだから」というのは、確かに、「税務署」と市町村の「納税事務所」の違いを説明していることになりますが。 「警察署、消防署、税務署、労基署…この署がついているお役所は、その管轄するルールに違反し、悪質だとみなされると逮捕権を持っている役所です」という名回答がネットにありました。 そういえば「公共職業安定所(ハローワーク)」と「労働基準監督署」も確かに、そんな気がします。ブラック企業を摘発するのは「労基署」ですね。