マイナンバーカードについての考察の一応のまとめ

どういうことになっているのか気になりだした発端は、外国人の在留者が今後増加してくる事情があります。この日本に中長期在留する人は平成30年度末現在270万人で、総人口1億2千万人に占める割合は、2%程度ですが、今後さらに増加することが見込まれています。この方々は全員、在留カードを所持しています。

そうであるのに、本来の日本国籍を持つ人は、それに該当するものを持たなくていいおか。例えば、レンタルビデオ店でDVDを借りる際のID証明として「自動車運転免許証」がよく使われますが、この使われ方は、本末転倒ではないか、と感じたからです。

wikipediaで各国の状況を調べてみました。

当然ながら、どの国にも「個人識別番号」の類の制度があります。さらに、wikiを読み進むと、あのインドでは2009年に「インド固有識別番号庁」(UIDAI)を設置し、各国民に12桁の番号を割り当てることを実施中ですでに9割の方、11億人が完了しているということです。出生届など身分を証明する書類が不備な貧困層も、社会保障など行政サービスを利用できるようにしいていると報告されています。 また、タイの事情も興味があります。「バット・プラチャーチョン」(直訳:市民カード)の呼称で知られているもので、正式には、「バット・プラチャムトゥワバットプラチャーチョン」(直訳:携行市民カード)というものです。日本のような制度の目的として「国民の便利を向上させるため」に成立したものではなく、タイ人かそうでないかを官吏が判断するためのものと言う性格のものです。15歳になればタイ王国から与えられ、15歳になると与えられ、それと同時に「称号」が大人になったものにかわる市民にとって一種の「通過儀礼」となっています。

日本のマイナンバーについての評論のなかで、「うまくいっている国、たとえばエストニアは国民が権力を監視する制度、一方、日本は権力が国民を監視する制度だ」という内容をよく目にします。

タイの事例は、まったく、その目的=権力が国民を監視する目的で発行されています。ところが、市民はしたたかですので、カードが発行されることはタイ国民として認められたことを意味します。タイに帰化した人も誇りをもってこのカードを受け入れています。 日本の場合、第1目的は、あくまで、国民の利便性向上のため、社会保障と税務を簡便にするためだ、として導入されています。すでに、上記のコメントを唱える人は誤解しているか、あるいは、意図をもってマイナンバーに反対したい人だと気がします。

また、「こんなに重要な番号なので情報漏洩が心配だ」という声もあります。この点では、政府の広報にも問題があるのではないかと思います。「大事な番号なので大切に保管し他人に知られないように気をつけてください」と言っています。 たしかに、重要な番号には違いありませんが、仮に、他人が知っても電話番号や生年月日のようなもので、それを知ったからと言ってもすぐに犯罪に発展するものではありません。「写真付きのマイナンバーカード」がなければ、番号が他人に知れたとしても、その番号を唱えるだけでは、レンタルビデオ店でDVDを借りることすれできません。 たしかに、多人数の銀行預金残高とマイナンバーがセットになっているような情報が漏洩すると、番号によって個人の財産が特定されて問題になるかもしれません。これは、大規模な情報漏洩というたいへんな事態が問題なのであって、マイナンバーのせいではありません。そこのところを正確に示す必要があるのではないかと思います。

なくて生活できていたので、あらたな番号など、とにかく心配のタネは増やしたくないわ、という意見もわからないではありません。政府の広報としては、「この番号はたいしたものではないのですよ。皆さんのお名前のようなもので、バレても世の中には何も影響しないのですよ」といった類の宣伝が必要ではないかと思います。

そのように政府がことさら配慮した言い回しをするのは、「個人情報保護法」などのよく内容がわからないまま、とりあえずプライバシーは公開されたくない、という社会風潮があるものと思いますが、それに加えて、1960年代から「国民総背番号制度」というものが、政府のよからぬ政策であることが左派系の政党から唱えられ、何度か失敗しているという背景があります。こういう政治的な枠組みのなかでは、非常にわかりにくい言い回しをしなければならず、ストレートに判断できない状況が生まれてしまいます。

また、「番号が漏洩しても、たいした影響がないのはわかった。政府は膨大な税金を使って制度化しようとしていても、いつものようにうまくいかないのが日本の伝統だからね」というようなスジ違いの反応もあります。このような政策を茶化した評論も問題の本質をわかりにくくさせている一因かと思います。

また、どうしても「税金をとられたくない」ということを第一に考える人、なんとか、国に隠しておきたいという思惑をお持ちの人が相当数いるものと思います。いつの世にも、そういった風潮はあるものと思いますが、二重帳簿を作ったり、親族郎党、すなわち他人名義の口座に利益を貯めこんだりといった「アナログ手法」は、やがてAI化の波によって一掃されるときがくると認識すべきだと思います。

国としては、さらに次の工程も視野におき、関係省庁と足並みをあわせて制度の充実に取り組んでいることを知っておきましょう。マイナンバー及びマイナンバーカード無しでは生活できないような世の中が早く実現できれば、無駄な議論をしなくても済むものと思います。 2019年の通常国会では、いくつかの重要な法案が提出されるようです。国会が空転しないことを願っています。