入管問題とは(その3)

国際手続きのややこしさは、社会環境の変化に伴い、法制度がこまめに変化することに一因があるように思います。それに伴い、用語もいろいろ登場します。

深刻な人手不足に対応するために、2019年4月から、14業種に「特定技能1号」すなわち、「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」と認められる業務に従事する者が導入されました。新聞などでもよく目にすることと思いますが、改めて、その「14業種」

建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、 産業機械製造業、電子・電気機器関連産業の14の業種。

さらに、①建設業、②造船・舶用工業の2つの業種で家族滞在や在留期間更新が可能な「特定技能2号」いう在留資格が新設されました。

「特定技能1号」と「特定技能2号」の大きな違いは、 ・どれだけ日本にいられるかという滞在期間;特定技能1号は5年。2号は更新の条件  を満たせば回数の制限なく更新ができる。その会社で定年まで働くことも可能 ・2号は家族を呼び寄せることもできる。

この2点です。制度の運用は始まったばかりなので、後日、改めて、進捗具合や、今後、どういうことが期待されているか書きたいと思います。

一方、「高度人材」という定義は、今回の法改正以前からおりました。学歴があって、一定の職業経験があり、年齢が若く、日本語能力や経営者としての実績などのボーナス点が加われば、高度人材として認めてもらえるという制度になっています。「技術・人文・国際業務」がその代表かと思います。技術と人文、つまり理系と文系はだんだん境界が難しくなってきましたので、セットの定義になっていると申請上、簡易になりました。ここで使われる国際業務とは通訳や翻訳ができる人です。貿易商社などでも翻訳ができる人は重宝しますね。

出入国在留管理庁が、この人物はたしかに「高度人材」に該当するということを評価するための評価項目は事前に示されています。腕のみせどころは、確かにその評価項目に該当する根拠を示せるかどうかということになります。

外国人本人がそ申請をすることに代わって申請取次をすることも行政書士の役割のひとつですが、その前提で行う行為に特有の用語として、普段はあまり聞きなれない「疎明」という言葉を理解する必要があります。

 「疎明資料」とは、本人以外の方が交付請求する場合の請求事由(発生原因・内容・理由)について客観的に確認することができる資料のことです。 ーーこれは、ある地方自治体のホームページに、わざわざ解説されているものです。

相手があることですから、こちらが勝手に、いい人だ、高度な人材だと形容しても意味のないことで、ここでいうように、客観的に書類で示すことが必要になってきます。

大学や大学院の卒業証明書のようなものは最もわかりやすい事例です。年齢などもそれを示す我が国の例では戸籍謄本のような生年月日がわかるもの、あるいは身分証明書のようなものを添付するだけでことが足ります。

一方、提出書類に工夫がいるものも中にはあるものと思います。

「客観的」でなければならないので、特定の業務の就業経歴のようなものは、現在の勤務先が作成してくれるのか、あるいは、自分で書いた経歴書に頼らざるを得ないのか。 そのような公的な書式に該当しないものをいかに客観的に説得力を持たせるかということが重要なのかと思います。

従来のような、タコ部屋に缶詰にされる低賃金労働者ではなく、このルートから人材を確保していく、というのが国の方針のようです。

日本人の賃金と比べてどうなのか、というあたりを次回考察したいと思います。

季節は急加速して夏に突入。来月は選挙もあり熱い夏になりそうです。