不動産売買の重要事項説明をITツールで行うとは

「政府は2月9日の閣議で、行政デジタル化の司令塔と位置付ける「デジタル庁」設置法案を含むデジタル改革関連6法案を決定した」という報道のなかで、「宅地建物取引法では、宅地建物の売買契約などに関する重要事項説明書を電子化し、押印を廃止する」という一言が気になっております。

不動産購入にあたって、契約の成否を左右するような重要な情報であるため、「購入者等が実質的に情報の持つ意味を認識し、理解した上で判断したかどうかが重要」とされているポイントです。

「重要事項説明」とは、こういう内容です。

◆次の事項は、売買・交換・賃貸を問わず、必ず説明しなければなりません。

・登記された権利の種類・内容、登記名義人(例:抵当権など)
・飲用水・電気・ガスなどの供給状況や排水設備
(整備されていない場合は今後の見通し、特別な負担の有無)
・契約解除や損害賠償の予定や違約金の額
・代金、交換差金、借賃以外に授受される金銭の額、目的
・宅地建物が、造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域にあるときはその旨
・(未完成物件の場合は)工事完了時における形状および構造

その説明の際に、紙を使った説明ではなく、パソコンやタブレット端末などを使って行うことだけではなく、その場に説明者がいなくても、テレビ会議やZOOM等を利用して重要事項説明が行えるようになりました。これを「IT重説」と呼んでいます。

その場合でも、

①重要事項説明書等を電子化したファイルに電子署名を施し、説明の相手方に交付し、同ファイルを用いて重要事項説明を実施。
②現行制度の対応として、宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書も合わせて送付。
③重要事項説明は、IT重説により実施

という手順を踏んで実施することとされてきました。

今回の新聞報道は、それをさらに簡略化したものなのかどうか、詳細はわかりません。本来の趣旨が、契約行為に不慣れな購入者が実質的に情報の持つ意味を認識し、理解した上で判断したかどうかが重要という趣旨の「重要事項説明」なので、たしかに、三文判の「押印」自体はどうでもいいことなのかもしれませんが、具体的な改正内容が気になるところです。

(かわいいイラスト、いらすとやさんからいただきました)