土地登記が大きく変わるきざしです

土地の登記の業務は、良く間違われますが、司法書士さんの業務範囲です。ただし、遺言、相続の関係で、どうしても行政書士として知っておく必要がある重要なテーマです。

相続が発生しても、遠い親戚に連絡がつかなかったり、あるいは親族間で争いごとがあったりした場合、土地が共有のまま、名義は故人のままで放置されてしまっているという事例が多数あるようです。そこに家が建っているケースでは「空き家」問題に発展します。すでに、日本全体では、6軒に1軒は空き家だというデータがあります。また、2016年時点で所有者不明土地は全国で410万ヘクタールに上り、九州本島の面積を上回っており、このままの状態が続けば、2040年までに北海道本島に匹敵する720万ヘクタールに広がるとの試算もるようです。

長く続いてきた土地の登記制度ですが、家族に関する考え方も戦後70年以上が経過し、変わってきていますので、実際の世情に合わせて見直すべきだという機運があります。

2月10日付の新聞に「土地登記は相続3年内に、違反なら過料 法制審答申」という記事がありました。まだ、改正案の段階ですが、なかなか画期的な内容なので、かいつまんで見ていきます。

改正案では相続によって取得を知ってから3年以内に登記を申請しなければ10万円以下の過料を科すという点が重要なポイントになっています。罰則は、新たに相続する人が対象になります。

ただ、これだけでは、登記が促進されるか効果が期待できません。「登記手続きの負担は減らす。相続人のうち1人の申し出で登記ができる。10年間、届け出がなければ行政が法律で定める割合で遺産を配分する『法定相続』にする」という点と抱き合わせです。

これは、なかなか良い案だと思いました。誤解をおそれずに書けば、相続や登記は、もっと、事務的に感情論抜きで行われるべきだというのが私の持論です。司法書士の方に頼らなければできないくらい簡単でない仕組みになっているから、お金もかかるし放置されるケースが多いのではないかと思います。

今回の改正では、相続人が複数存在しても、そのなかの1人の申し出で登記ができることを目指しています。さらには、それさえも行われず10年間放置された場合は、役所が遺産分割を法定造族の割合で決めてしまって登記してしまうという仕組みにもっていこうという案です。

さらに「土地やビルなどの建物の共有者が不明でも改修や売却をしやすくする。裁判所の確認を経て公告し、他の共有者の同意で利用目的を変更できる。短期間の賃貸借は共有者の過半数で決められる。」ということも盛り込まれています。

名目上の権利が残っていて活用されない土地や建物などが再活用される方向に進むのか、この法改正の動向もフォローしていきたいと思います。

(かわいいイラスト、いらすとやさんからいただきました)