呼び名にこだわりたい「マイナンバーカード」
ブログのテーマを選ぶ際に、政治の問題にどの程度言及しようか迷うことがあります。外交問題、新型コロナ対策、エネルギーの将来像など、判断を迫られる課題がいろいろあるなかで、政府は一つ一つ、舵取りを行っているわけで、その動向は直接・間接的に日々の生活に影響を及ぼすからです。許認可などの行政手続きに波及することもあります。それらの課題に言及する必要があるときには、こうあってほしいという期待を書くようにしています。
当面、気になるのは、行政手続きのデジタル化です。新型コロナ対策として、政府が全国民一人ひとりに一律、10万円の給付金を支給することが決まっても、具体的な給付の手続きが各市区町村によって一律ではなく、特に、住民基本台帳との照合をコンピューター上ではなく、人手による人海戦術で行う必要があることが報道され、我が国の行政手続きの遅れが指摘されました。
また、春先には、外出自粛が呼びかけられたにも関わらず、会社に出勤する人が少なからず存在し、テレビの街頭インタビューなどで出社する理由を尋ねられると、印鑑が会社にあるからどうしても出社せざるを得ないということを理由にあげた人が一定数に上ったことも話題になりました。各種の手続きに支障を来すのは、そのような印鑑文化ではないか、と。
さて、菅義偉内閣に変わり、デジタル庁が発足することになり、そのような課題が一挙に前進する機運にあります。ただ、デジタル化の推進は急に決まったことではなく、マイナンバーカードに象徴的に現れているように、10年ほど前から、その方向で進めようと決まっていながら、既存の仕組みや書類の流れがあり、簡素化できない障害になってきたものと思います。
マイナンバーカードの所管も、これまでの総務省から、内閣府直轄のデジタル庁に移管するという報道もありますので、各省庁の垣根を取り払う作業が進展することになろうかと思います。
近場では、マイナンバーカードに健康保険証の機能を統合することが決まっており、来年の4月から実施されようとしています。新型コロナの報道を受けて、新規にこのカードを作る人が増えたとはいえ、100%普及には至っておりません。今回のような切り替えに伴って普及することを期待したいと思います。
それに関連し、今日の日経新聞に、「自民党のデジタル社会推進本部が政府に提出する第1次提言案が分かった。マイナンバーカードに健康保険証の機能を加えて一体にするよう提案する。移行を促すため、現行の保険証は発行停止を検討するよう求める」という記事がありました。
読み飛ばしてしまうところでしたが、前半の指摘は正しくありません。マイナンバーカードに健康保険証の機能を加えることは決定事項であり、すでにそのための受付が始まっています。ですので、政府に提言する内容ではないと思われます。
後半は新規なものです。せっかく、マイナンバーカードに健康保険証の機能が加わるのに、国民全員がストレートにマイナンバーカードを所持するようにはならないことを見越して、これまでの厚生労働省の報道では、「従来の健康保険証も使うことができます」と言ってきていました。この提言では、「移行を促すため、現行の保険証は発行停止を検討するよう求める」という点が重要です。かなり乱暴な気がしますが、そのような措置に向かわなければ、「国民全員がマイナンバーカードを持っている」という行政手続きデジタル化の一丁目一番地が始まっていかない気がいたします。
ところで、枝葉末節な点ですが、記事の見出しに時々、マイナンバーカードを「マイナカード」と省略されることがあります。メジャーなカードにすべきなのに、あえて、「マイナカード」と呼ばせることに、まさか悪意はないとは思いますが、3文字切り詰めることは避けてほしいと思います。
(イラストの著作権はジブリです。本文とは関係ありません。「コクリコ坂から」のものです)