骨太の方針原案;第1章 新型コロナウイルス感染症の下での危機克服と新しい未来に向けて

「骨太の方針」(ほねぶとのほうしん)という言葉がたいへん新鮮味があった頃があります。内閣総理大臣小泉純一郎が「聖域なき構造改革」の着実な実施のために経済財政諮問会議にて決議させた、政策の基本骨格のことです。2,001年のことです。当時の総理のブレーンが「骨太の方針」として総論を作成し、各論を各省庁(大臣)に作らせ諮問会議で発表させ、その各論の実施プロセスを工程表として提出させ、定期的にその進捗状況を報告させることで、政策実施の進行管理を行った、という経緯であることがwikipediaに載っています。

「骨太の方針というのは大きな傘みたいなもんだ。総論をしっかり抑えてその下に各省の改革プログラムを組み込んでいく。そうすればみんないやでも改革案を考えざるを得なくなる」小泉純一郎

その後、2009年まで毎年続けられましたが、民主党政権の3年間は作られませんでした。2013年に、それが復活し、今回も同じ手法が採られています。

今年、2020年7月8日に経済財政諮問会議が「経済財政運営と改革の基本方針 2020」(骨太の方針2020)原案を公表しました。新型コロナウイルス感染症後の社会に向け、「新たな日常」を実現するための様々な政策を提案しています。

「新たな日常構築の原動力として、デジタル化への集中投資・実装とその環境整備(デジタルニューディール)を掲げ、今後1年間で社会全体を集中的にデジタル化する方針を示した。」とされています。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0708/shiryo_02.pdf

少し、内容を見ていきたいと思います。構成は、こうなっています。

第1章 新型コロナウイルス感染症の下での危機克服と新しい未来に向けて
第2章 感染症拡大への対応と経済活動の段階的引上げ
第3章 「新たな日常」の実現

本日は、その「第1章」から、抜粋いたします。

ここでは「我が国が直面するコロナのグローバル危機」ということが述べられています。「この影響は広範で長期にわたる」とし、

・世界的なデジタル化の動きや自国中心主義の高まりとあいまって、国際政治経済の構図は大きく変容し、自由貿易体制をはじめとする今後の世界秩序に大きな影響を与えかねない。

・世界は、感染症拡大に伴う混乱や不安が広がる中で、各社会レベル(コミュニティ、地域、国家、国際社会)で分断が見られている。

・我々は、時代の大きな転換点に直面しており、この数年で思い切った変革が実行でき
るかどうかが、日本の未来を左右する。

と続きます。

したがって、コロナ後の経済復興といっても、単に、景気が落ち込んだ旅行業や飲食業を再活性化させるための「GO TO」キャンペーンなどにとどまりません。

「デジタル化は、生産性を引き上げ、今後の経済成長を主導するとともに、より便利で豊かな生活を実現する上で重要な役割を担うものである。」と、何度も、この方針のなかに「デジタル化」が登場します。

「次世代型行政サービスの早期実現に向けて、感染症の下で明らかになった行政のデジタル化の遅れに対し、新技術の単なる導入だけでなく、制度や政策、行政も含めた組織の在り方等をこの1年で集中的に改革し、政府全体のデジタル・ガバメントの加速化や国・地方一体での業務プロセス・情報システムの標準化・共有化、地方自治体のデジタル化・クラウド化の展開、行政と民間の連携によるプラットフォーム型ビジネスの育成等に集中的に取り組む。」

「社会保障については、感染症対策により医療・介護システムの課題として認識された、柔軟で強靱な医療提供体制の構築、デジタル化・オンライン化を実現する。世界に誇る国民皆保険を維持しつつ、社会保障制度について、基盤強化期間内から改革を順次実行し、団塊の世代が 75 歳以上に入り始める 2022 年までに基盤強化を進めることを通じ、より持続可能なものとし、次世代に継承する。」

引き続き、どのように具体的な施策に結び付いていくのか、着目していきたいと思います。

( 写真は、APSさんによる「写真AC」からいただきました)