日本語試験、合格証を偽造・・女「数え切れないほど売りさばいた」ーーこの記事を見て思うこと

またか、とか、やはり、という思いを持ってしまいますが、1月26日付の読売新聞に、「独自;日本語試験、合格証を偽造・・女『数え切れないほど売りさばいた』」という記事が掲載されました。「独自」とわざわざ歌っているのは、他の新聞とは別に読売新聞が独自に得た情報というほどの意味かと思います。

この日本語試験とは、日本国内では日本国際教育支援協会が、日本国外では国際交流基金が行っているもので、30年以上の歴史があります。年々、受験者が増え、2018年には、86か国、100万人が受験しています。。日本語試験最上級のN1から最下級のN5まで5段階のレベル認定を行うもので、留学や就労の際に、一定のレベルの取得を求められるものです。例えば、特定技能1号はN4以上が求められます(N4:基本的な日本語を理解することができる)。合格率(認定率)は、2018年実施分で約30%程度です。

新聞記事によれば、日本語試験の合格証が偽造され、facebookなどのSNSを通じて日本国内で大量に販売されているということです。記事は、合格証を偽造したことで逮捕されたことを報道しているわけではなく、偽造の実態を解説しています。

「認定書の客の多くは留学生。日本の企業が事務職などの採用条件にする「N2」の注文が多い。アルバイトの採用などに有利とされる「N4」も需要が高いという。」
さらに、「入国前審査では、日本政府が試験団体に名前を照会して偽物を見破ることも可能だが、企業は外見で確認するしかないという。ある人材派遣会社の代表は「本物であるという前提なので、精巧であれば見抜くのは困難だ」と話す。」と書かれています。

依頼者が名前や住所、顔写真などを送れば、1週間程度で中国から国際郵便で現物を届けてくれる、というようなシステムができあがっているようで、なにしろ、この記事では、「数えきれないほど売りさばいた」ということです。受験料が5,500円のところ、偽の認定証の費用は1万5千円ということで、1,2度不合格になると手を出したくなるような価格設定になっています。

「偽認定書が広まると、不正をしていない外国人にも悪影響が出かねない。日本の電機メーカーに就職するためにN2を取得した大阪府内のベトナム人女性(37)は「必死で勉強したのに疑われかねず、イメージが悪くなる。不正ができないよう早く対策を取ってほしい」と訴える。」--そういう影響も懸念されます。

さて、中国を拠点にして、偽の認定証が大量に発行されているこの問題、防止する策はないものでしょうか。
私は、なんでも、紙の「証明書」を求める仕組みをそろそろ改める時期に来ていることを感じます。精巧な偽物を作る技術が驚くほど進歩しているのであれば、精神論ではだめで、「証明書」とはそのように、何割か偽物が紛れ込んでいると考えざるを得ないと思います。試験を実施している「財団法人日本国際教育協会」は、文部科学省からの国庫補助金を受けて留学生に対する福祉・援助事業等の中枢的な実施機関としてスタートしたとのことです。今時、この機関に受験者の名前や生年月日を問い合わせれば、紙の「認定証」に頼らずとも、電子情報で合否の問い合わせは容易にできるのではないかと思われます。新聞記事にはそこまで書かれておりませんが、省庁の垣根を取り払った情報の共有によって、偽物が混じるおそれがある「証明書」提出文化を卒業する時期にきているのではないかと思う次第です。利用者が100万人もいるのであれば、そのようなサービス環境を構築するのは容易なことではないかと思います。