成年後見制度はなぜ機能していないのか;この制度でできないことの例示を具体的にすべき
成年後見制度が始まったのは、平成12年、西暦2000年からですので、すでに20年近くの年月が経過しています。高齢化が進み、認知症に罹る方の数も相当数に増加しています。にもかかわらず、この制度が十分に活用されていないとう記事をよく目にします。 成年後見人を立てるほどの財産を持っていない、制度をよく知らない、手続きが面倒など、いくつかの理由があるものと思いますが、一方で、制度を使った結果、余計、ややこしくなってしまったという事例も報告されています。その一例。
「後見人候補者申請したにも関わらず、裁判所が下した決定は、見ず知らずの弁護士や司法書士が選ばれた、というケースがあります。 しかも、この場合、やっかいなのは、希望する候補者が選ばれなかったことを理由に、不服申し立てができない、というオマケがつきます。 このようなケースになる背景として、親族間に複数の相続人候補者がいて、すでに争続問題になっているというようなことがありえます。 成年後見制度は、相続する家族のためのものではなく、あくまで、「判断能力がなくなってしまった人を支援するしくみ」ということを忘れがちです。
全部網羅したわけではありませんが、この制度で扱うことができないものを拾ってみましょう。
- 相続税対策
- リスクの高い資産運用
- 選ばれた専門職後見人を理由もなく解雇すること
- 子供や孫などの親族へ贈与すること
- 手術に対する同意
- 通夜、告別式などの死んだあとの手続き
今、生きて生活している不自由な本人のための制度であることに立ち返れば、なんとなく理解できるものの、「通夜、告別式などの死んだあとの手続き」などは、本人の意識がはっきりしているときに簡便な方法で引き受けることができても良いような気がします。 ともかく、この制度に限らず、マニュアル全般などにも言えることですが、その制度で「できないこと」は一般にあまり親切に書かれていません。「できないことを挙げればきりがない」という事情によるのですが、(たとえば、「この制度を使って宇宙旅行できるか、と言われればできない」など)、成年後見制度は早20年になるのですから、いろいろな事例から、「期待してもできないこと」をきちんと示す必要があるように思います。